U99
日本国内でドローンを飛行する場合、重量が100g未満だと航空法でいうところの模型航空機に区分され、基本的には機体登録も飛行許可申請も必要ないので、非常に手軽だという事は今では良く知られている事だと思います。
例えば Tinywhoop のように屋内でも比較的安全に楽しめる機体は登場してからそれなりに長い歴史がある代表的なものです。
他にも、Tinywhoop を一回り大きくしてダクトを排した Toothpick と呼ばれる類のものがあり、これらは大きさのバリエーションもかなりあるようです。
プロペラ直径3インチくらいのクラスになると、利用できるパーツやフレームの種類が大幅に増えるのですが、3インチで離陸重量100g未満を実現する為には、かなり軽量化を意識する必要があると考えてよいでしょう。
フレームがかなりの種類リリースされているという事は、それに適合したエレクトロニクスも存在する為、小さく軽量なクラスでも、今では利用できるパーツやフレームもかなりあります。
そういったパーツ類の構成でU99=100g未満という非常に限られた重量の中でも、工夫次第で色々な楽しみ方が可能なはずです。
個人的には100g未満であっても、やはりフリースタイルがしたい、と言う事で、今回は「U99 FPVフリースタイル機」について考え、まだまだ試したい事はあるものの、一旦納得感のある構成に行き着いたのでご紹介したいと思います。
Armattan Tadpole
主にフリースタイルフレームを手がける Armattan から、Tadpole (タッドポール) というフレームがリリースされたのは最近のことではありません。
発売当初はプロペラ直径2.5インチのモデルのみでしたが、その後3インチモデルとHDモデルがリリースされて現在に至ります。
以前、当店でU199での構成が可能な Tadpole のバンドル商品を販売していましたが、そのバンドルでコアとなっていた16×16mm規格の FC・ESC が入手できなくなってしまったことから、当店としても販売を終了せざるを得ませんでしたが、U199の Tadpole バンドルを企画する際のテストでフリースタイルフレームとしての性能と信頼性の高さを感じていました。
Armattanフレームの特徴は強靭さと保証・メンテナンス性の高さにあります。
自分の場合クラッシュの際に機体にかかる負荷が非常に高いフィールドであることから、メンテナンスや補修に割く時間の短縮と、コストの軽減の為に、Armattan のフレームを好んで使用しています。
ちなみに、U99 FPVフリースタイル機を考えるにあたり、同クラス内で主流のバッテリーを機体のメインフレーム下側にぶら下げるタイプのフレームではなく、トッププレートの上に搭載するタイプに拘っているのは、凄く個人的な好みの為です。
本人が感覚的に満足していれば、どんな機体でもFPVフリースタイルになりうると思うのですが、個人的にはやはりフリースタイルフレームが飛行中のバランス感の面でも、耐久性の面でも、メンテナンス性の面でも、見た目においても好きなので、選べるならフリースタイルフレームを選択したいと考えています。
Tadpole くらいのサイズになるとパーツもフレームもかなり選べるようになり、当然パワーもあるので記録カメラを搭載する方向にシフトする事も可能なのですが、飛行を楽しむことに集中したいと考えた場合、自分の場合フリースタイルフレームの使用は外せない要素となります。
実はU199の Tadpole バンドルの時点で少し軽量化すればU99になる重量だった事もあり、信頼のおけるフリースタイルフレームで、U99としてバランスの取れた構成を模索する、という形で今回 Tadpole をフレームとして選択しました。
パーツリスト
フレーム | Armattan Tadpole 2.5" (or 3") フレームキット+ Armattan Tadpole Whoop AIO Board ブラケットキット |
フライトコントローラー・ESC | Holybro FETtec Mini AIO 15A |
FPVカメラ | RunCam Phoenix 2 Nano |
VTX | BETAFPV M03 25-350mW 5.8G VTX |
モーター | T-Motor F1103 (KV 8000) ×4 |
受信機 | BETAFPV ELRS Nano レシーバー (2.4G) |
Armattan Tadpole のフレームは、標準状態では16mm×16mm規格のFC・ESCを搭載する仕様ですので、Armattan Tadpole Whoop AIO Board ブラケットキットというオプションパーツを使用して現在では主流の25.5mm×25.5mm規格のAIOボードを搭載します。
重量として大きなところでは、2Sバッテリーを使用する構成とし、バッテリー容量としては450mAhを使用しています。
バッテリーメーカーによっては、もっと良いものが見つかる可能性もありますが、Armattan Tadpoleを フレームとして選択し、1103サイズのモーターを組み合わせた場合、100g未満となると大体この辺りが上限となりそうです。
2.5インチと3インチ
Armattan Tadpole は2.5インチと3インチのラインナップがありますが、どちらでも100g未満で構成する事が可能です。
2.5インチよりも3インチの方がパワー感や滞空時間のある機体にできるのですが、3インチで試した範囲では飛行時間が2分程度、2分30秒は難しいかなといった具合で少々物足りないかなという印象です。
先程の構成で2.5インチならば、もちろんフライト内容によりますが2分半〜3分くらい飛行できますので、先程ご紹介した構成では2.5インチの方が使いやすいように感じました。
BETAFPV ELRS Nano Receiver
今回受信機は BETAFPVのELRS Nano レシーバーを使用しました。
この受信機は5インチ機でも充分使用できるもので、100g未満の機体を作る上では重量の部分で贅沢かなとも思ったのですが、飛行を楽しむ上では飛行範囲に対する安心感も重要な要素であると考え採用しました。
BETAFPV ELRS Nanoレシーバーは基板が非常に薄い為、狭いボディスペースでもレイアウトする事ができ、Tadpole の場合アンテナの収まりも良かったです。
今回フライトコントローラー・ESCとして Holybro FETtec Mini AIO 15A を選択した為、フライトコントローラーから BF Passthrough 経由で受信機の設定を書き込む事ができないのではないかと考え、BETAFPV ExpressLRS Recovery Dongle を使用して設定を書き込みました。
BETAFPV ExpressLRS Recovery Dongle を使用すると、受信機を取り付ける前に設定を書き込む事ができますので、沢山受信機を買った際にまとめて設定を書き込みたい時などにも便利だと思います。
Holybro FETtec Mini AIO 15A
今回FC・ESCとしては Holybro FETtec Mini AIO 15A を使用しました。
この小ささでKISSファームウェアを使用できるのは、個人的にはかなり嬉しく、小型でもKISSの雰囲気を充分に味わう事ができます。
Betaflight であれば、新しいものから以前からあるものまで他にも色々と選択肢はありますので、お好きなものを選択していただくのが良いかと思います。
Holybro FETtec Mini AIO 15A は、デフォルトでは上記説明書の抜粋のように、取り付ける仕様になっています。
今回 Armattan Tadpole Whoop AIO Board ブラケットキットを使用して Tadpole に取り付けていますので、時計回りに45度傾けて取り付けました。
そのため、KISS FCの設定で上記画像のように Use custom orientation を Yaw 方向に45度と設定する必要があります。
また、特に Tadpole 3インチフレームを使用した際に、スロットルのパンチアウト時にかなり振動が発生しました。
使用するプロペラによってもかなり振動の出方に差があったのですが、PIDの調整ではおさまらず、TPAの Breakpoint2 をデフォルトの Throttle50パーセントから40パーセントへ、少し早いタイミングでかかり始めるよう調整する事でかなり改善しました。
高スロットル時の制御が甘くなる感じはもちろんあるのですが、もし振動が気になる場合、TPAを調整してみると良いかと思います。
TPAを上記設定にした場合、PIDはデフォルトスタートで、あとは好みにあわせて調整していけば良いという印象でした。
FC・ESCのAIOボードの選択
FC・ESCのAIOボードを検討する際に、気をつけなければいけないのがESCの性能です。
今回モーターとしては T-Motor F1103の KV 11000と KV 8000を試し、FC・ESCのAIOボードとしては NewBeeDrone BeeBrain BLV3 AIO フライトコントローラーと Holybro FETtec Mini AIO を試しました。
上記は T-Motor F1103 の KV 11000 のテストデータですが、HQ65MMを使用した場合最大13.59A程度の電流にまで達するというデータになっています。
上記は T-Motor F1103の KV 8000のテストデータです。
表にある最大のものでも11.52Aで、回転数が少ない分 KV 11000よりは負荷が低い事がわかります。
Holybro FETtec Mini AIO は15Aまでですので、そこまで余裕はないですが、一応足りているスペックとなっていますが、F1103 (KV 11000 )で繰り返し使用しているうちに Holybro FETtec Mini AIO のESCが一つ壊れてしまいました。
決して基板に優しい穏やかなフライトをしていた訳ではなく、かなり激しいクラッシュも、水没もしていましたので、モーターの負荷が直接の原因かはわかりませんが、F1103 (KV 8000) を使用する方が安全かもしれません。
もちろん KV 11000のモデルの方が全体的にパワー感がありましたので、リスクをとってパワーを優先する、もしくはESCがより高い電流に対応しているFC・ESCのAIOボードを選択するという方向性も良いかと思います。
自分の場合、FC・ESCのAIOボードは結構高価なのでなるべく長持ちして欲しいという気持ちと、やっぱりU99でも KISS FW が使いやすいなという感触があり、FETtec Mini AIO と F1103 (KV 8000) の組み合わせで一旦落ち着きました。
NewBeeDrone BeeBrain BLV3 AIO フライトコントローラー
実は FETtec Mini AIO を試す前は NewBeeDrone BeeBrain BLV3 AIO フライトコントローラーを使用していました。
BeeBrain BLV3 はRCの受信距離が短いので、外で遊ぶには少々不安があるものの、ハンダパットも大きくて作業しやすく、これ一枚にVTX・受信機・FC・ESCが全て含まれている為機能から考えると非常に軽量で、更に2Sまで対応してくれる優れたボードですので、U99の機体を考える際には是非検討したいパーツかなと思います。
BeeBrain BLV3 のESCは12Aまでで、テストデータ上では足りていなかったものの、フリースタイルでスロットル100%は滅多に使用しないだろうと考え、検討を始めた初期の段階で F1103 (KV 11000) で使用していました。
こちらは残念ながら、10フライトしないくらいでESCが一つダメになってしまいました。
このボードも結構気に入っていたので、非常に後悔し、あまり無理させるのも良く無いと思い Holybro FETtec Mini AIO に切り替えました。
BETAFPV M03 25-350mW 5.8G VTX
VTXは BETAFPV M03 25-350mW 5.8G を使用しました。
このVTXは BETAFPV Meteor65 Pro に搭載されているものと同じものですが、非常に軽量で350mWと比較的高出力、安定した映像信号が得られ、価格も手頃なので今のところU99の構成を考える際には使いやすいVTXなのではないかと思っています。
今回トッププレートの裏側に両面テープで貼り付けて搭載しましたが、バッテリーの固定に輪ゴムを使う場合、あまりVTXに輪ゴムが接触しているとVTXの熱で輪ゴムが切れてしまいますので、注意が必要です。
T-Motor F1103 (KV8000)
今回最終的に2S用として T-Motor F1103 (KV 8000) を選択しました。
最近では様々なメーカーから08XX〜11XXサイスのモーターがリリースされており、選択肢もそれなりにあるのでは無いかと思うのですが、Tadpole のフレームでは、F1103のような固定用のネジ穴が4つ空いているモーターを使用します。
0802などのサイズでは現在3つのネジで固定するタイプのモーターが主流ですが、3つのネジで固定するタイプのモーターは Tadpole フレームでは使用できませんので、ご注意ください。
U99 FPVフリースタイル
FPVフリースタイルのスタンダードは、フレームやパーツの選択の幅という面においても、搭載できる重量と飛行性能の面においても、FCのファームウェアがデフォルト値で想定しているサイズという意味でも、圧倒的に5インチクラスと言えるでしょう。
以前にご紹介した Odnata (オドナタ)や今回の Tadpole の記事は、初めの段階ではFPVフリースタイルの入門向けとして、もしくは、飛行許可申請もタイミングや新しいシステムでこれまでと勝手が変わってしまった事などにより、承認を受けるまでに結構時間がかかるケースもあると思いますので、その間でも練習できるものとして、幅広い方にとって都合の良いのでは無いかと考えて検討を始めました。
もちろん、そういった部分でもU99の機体は非常に魅力的です。
しかし、色々試して行くうちに、思っていたよりもずっと高い飛行性能と使用性を実現でき、特に Tadpole に関しては自分のスキルの中で実施可能なトリックは基本的に全て実現できる事がわかりました。
機体にある程度慣れて来たところで、5インチフリースタイル機の代わりとしてではなく、自分の置かれている環境の中で、より「真にフリースタイル的な飛行」を模索する上でも、このU99クラスというのは充分に魅力的な分野なのでは無いかと考えるようになりました。
Odonata や今回の Tadpoleで色々試すにあたって、身の回りにも小型軽量で比較的スピードも緩やかだからこそ攻められるフィールドや、対象物や、視界の流れと接続が、まだまだありそうだと感じています。