高品質なFPV飛行体験を求めるユーザーへ
Orqa社がリリースしているOrqa FPV.One Pilotは、ドローンレースやフリースタイル、空撮に最適な高品質FPVゴーグルです。
自分は長い間FATSHARK HDO2を使用してきましたが、Orqa FPV.One Pilotに乗り換えてみたところ、素晴らしい完成度に感動しました。
実際に使用してみると、Orqa FPV.One Pilotはクリアな映像を提供し、静かなファンと風が直接目に当たらない点で非常に快適、DVR録画の画質も素晴らしく、ほとんどの点で他のアナログシステムのゴーグルよりも優れていると感じます。
今回はOrqa FPV.One Pilotのレビューを書きたいと思いますが、FPVゴーグルは身に着けて使用するため、インターネットを通じて得られる情報だけでは雰囲気が伝わりにくいことがあるかもしれません。
そのため、細かい使用方法や機能についてはマニュアルなどを参照していただき、ここではFATSHARK HDO2やSkyzone Cobra X V2との比較を交えながら、実際に使用して感じたOrqa FPV.One Pilotの良さを紹介したいと思います。
なお、Orqa社のFPVゴーグルには「Pilot」と「Race」の2つがあり、大きな違いは「Race」の方が画面が小さく、解像度もやや低い点です。
Orqa FPV.One PilotとRaceは外観の色が異なり、Pilotはガンメタルグレー、Raceは白となっていますが、今回紹介するのはOrqa FPV.One Pilotですので、混同しないようご注意ください。
まずは外観から
Orqa社のFPVゴーグルは、特徴的なフォルムをしていて、この形といえばOrqaという印象があります。
デザインの好みは人それぞれだと思いますが、Pilotの全体的な仕上がりや質感は素晴らしく、他のFPVゴーグルに見られるチープさは一切ありません。
FPVという比較的マイナーな分野で、ここまでクオリティの高い製品が使用できるという意外性や感動が手にした瞬間からあります。
高い操作性
ボタン類は全て上面にレイアウトされており、詳細はマニュアルを参照していただきたいですが、まず、右側の三角形のボタンが電源ボタンで、単押し+長押しで本体が起動し、起動中はこのボタンが赤く点灯します。
左側の三角形のボタンがファンで、ボタンを押すとファンが動作し、ボタン自体は青く点灯します。
ファンについては設定で起動時に自動的にファンが動作するようにすることもできます。
左右にスティック状のスイッチがあり、標準状態では上下左右でコントラストや明るさ(左)やカラーとルミナンス(右)を調整できます。
左側のスイッチを中央で押し込むと、グラフィカルなメニュー画面に入り、そのまま左のスティックで操作できます。
左側の丸い二つのボタンは標準状態で受信モジュールのチャンネル変更(この操作は対応している受信モジュールであればメニュー画面からRX設定に入り、VTXテーブルとFPV画面プレビューを同時に見ながらも実行可能)、左側の手前の丸いボタンはメニュー画面操作事にキャンセルボタンとしても動作します。
右側の赤い丸いボタンはDVRの録画開始ボタンです。
手前側の丸いボタンはバッテリーチェックで、押すとバッテリーの電圧が表示されます。
三角形のボタンはゴーグルのデザインと一体化しすぎていて、装着状態では探しにくいことがありますが、電源ボタンを装着する前に押してしまうよう気をつければ気になりません。
ファンに関しては、装着後でもメニュー画面から動作させることができます。
丸いボタンとスティック状のボタンは、装着状態でも指の感覚だけで簡単に見つけることができ、何度か使えば、全ての機能にアクセスすることができるようになると思います。
ゴーグル側面には、AVINやHDMI、オーディオのイヤフォンジャックなどのI/O関連がレイアウトされていますが、その辺りはまだ十分に使用したことがないので割愛します。
I/O関連の詳細については、是非マニュアルをご確認ください。
スペック情報から読み解く使用感
Orqa FPV.One Pilot 仕様(抜粋)
- 視野角:37° at 4:3 or 33° at 16:9 アスペクト比
- 画面解像度:1280 x 960 ピクセル
- 電源:6-25VDC (2-6S リチウムイオンバッテリー)
- フォーカス調整:-4D - +4D
- IPD 範囲:56-74mm
- 内蔵 DVR:1280x960, 50/60 fps, H.264, mp4
- 重量 (バッテリー含まず):256g
上記仕様の中で気になるところを抜粋しました、より詳しくは商品ページをご確認ください。
視野角と画面解像度
まず、視野角と画面解像度はFPVゴーグルの重要な仕様であり、HDO2とPilotは同じ画面解像度を持っていますが、HDO2は46度の視野角であるのに対し、Pilotは37度とやや控えめな視野角です。
視野角は、画面が視界に対して何度くらいの幅で見えるかを表す数値です。
Pilotのディスプレイサイズはわかりませんが、覗くレンズのサイズがほぼ同じですので、HDO2と同程度だと推測されます。
そのため、視野角の差はディスプレイが目の近くにあるかどうかによって大きく異なっていると考えられます。
HDO2は視界からはみ出すほど大きな画面が見えますが、その分、レンズが目に近く、まつ毛の長い人には不快な感覚を与える場合があります。
Pilotはレンズと目の間に適度な空間があり、ディスプレイが目から遠い位置にあり、画面全体がちょうど視野に収まるサイズです。
恐らく2画面タイプのFPVゴーグルの場合、装着感と視野角のバランスは非常に難しいのだろうと思うのですが、PilotとHDO2は大きな違いはここに現れており、Pilotはそのバランスについてよく考えられた作りになっていると感じます。
そして、Pilotのレンズと目との空間にはもう1つの工夫があります。
HDO2のレンズ周辺の構造は上記画像のようになっています。
特に注目していただきたいのは、曇り止めの風がどこから出ているかです。
HDO2にはレンズ上側の中央から付近から左右にダクトのようなものが搭載されていて、目とレンズの間の空間に風を送り込む構造になっています。
一方Pilotは、目とレンズの間に真横から風を送り込む構造になっています。
HDO2のように空間に風を送り込むのではなく、レンズに直接風を当てるため、曇りが取れるのが非常に早いです。
しかも不思議なことに、目に風が当たる感覚はほとんど感じません。
どのくらいこの曇り止めの性能が高いか伝えるのは難しいのですが、例えば、自分はマスクをしっかりしてしまうと、FPVゴーグルが曇ってしまいます。
これはHDO2を使用していても、Pilotを使用していても同じなのですが、HDO2ではしっかり水滴が付着して全く見えなくなってしまいます。
Pilotの場合は、息を吐いた時に少し曇り、吸った時に曇りは晴れる、といった程度の曇り方で、曇るといっても見えなくなるほどではないため、マスクをしたままでもなんとか飛行が可能かなと思います。
さらにPilotは14段階でファンのスピードを調整でき、最速でも非常に静かです。
非常に静かなのでフライト後にゴーグルを額にずらして着用していると、電源がついていることを忘れてしまうほどです。
電源
Orqa FPV.One Pilotは6-25Vまでの入力電圧に対応しており、2Sから6Sまでの電池で動作させる事ができます。
HDO2は7–13Vと非常に限られた入力電圧にしか対応していませんので、この点はHDO2よりもPilotの方が便利です。
Cobra X V2はこの部分については圧倒的に便利で、やった事はないですが18650電池を取り付ける事でも動作できるらしく、入力電圧は6.5-25.2V対応、さらにUSB 5Vでも動作出来るという、そんなに必要かどうかよくわからない位色々な電源で動作可能です。
Cobra X V2ほどのバリエーションには対応していませんが、2Sから6Sまでという範囲であれば大体何かしら使用できるバッテリーを持っているかと思いますので、この部分も大きなポイントかなと思います。
フォーカス調整と IPD 範囲
これらはわかり易く言えば視度(視力)調整と両目がどのくらい離れているか(瞳孔間距離)の調整範囲に関するスペックなのですが、フォーカス調整幅はPilotとHDO2で少々違いがあります。
自分の場合どちらでもしっかりフォーカスを合わせる事ができたのですが、人によってはこの値はしっかりチェックした方が良いかも知れません。
IPD範囲についてはHDO2が54mm〜74mmなのに対しPilotは56mm〜74mmなので、目が近くFPVゴーグルのIPD範囲をいつも両方一番内側にしている方にはPilotは合わないかも知れませんが、多くの人にフィットするものと考えられます。
内蔵 DVR
Orqa FPV.One Pilotは内蔵DVR録画が素晴らしいです。
以前Cobra X V2を購入した際にDVR録画性能が優れていて感動したのですが、Cobra X V2のDVR録画の解像度は720x480なのに対し、Pilotは1280x960で録画出来る為HDO2はもはや比較にならず、Cobra X V2よりも優れた画質で録画できます。
DVR録画なんてしない、という方もいるとは思うのですが、記録カメラを搭載しない機体のフライト映像を共有したり、OSD画面も含めたフライトの記録を映像で残したいという方には嬉しいのではないかと思います。
重量
Orqa FPV.One Pilotが256gなのに対し、HDO2が約207gなので、PilotはHDO2よりも多少重いゴーグルになります。
あまり気になりませんが、重量は軽ければ軽いほど良いと思いますので、この点においてはHDO2の方が優れていると言えます。
ちなみに1画面タイプのCobra X V2は332gなので、中では一番重く、それもあってか標準で付属するストラップも左右と上の3点で支えるタイプになります。
余談ですが、Orqa FPV.One Pilotはストラップの取り付け部分が完全にリング常になっており、HDO2のように切れ込みがない為、アナログゴーグル用のEthix ゴーグルストラップは取り付けできません。
その代わりEthix ゴーグルストラップ HDであればしっかり取り付けられますので、PilotでEthix ゴーグルストラップを使いたい場合は「Ethix ゴーグルストラップ HD」をご利用ください。
Pilotに初めから付属するストラップも幅広でしっかり固定でき、特に不満はない水準だと思うのですが、Ethix ゴーグルストラップの方がゴムが強力でしっかり固定できる感じがするので、自分はEthix ゴーグルストラップ HDを使用しています。
上記画像のストラップは上からOrqa FPV.One Pilotに付属するストラップ、Ethix ゴーグルストラップ HD、Ethix ゴーグルストラップ(アナログ用)。
受信モジュールは rapidFIRE がおすすめ
Orqa FPV.One PilotはrapidFIRE以外の受信モジュールも対応しているようなのですが、標準的に付属しているカバーがrapidFIRE用なので、受信モジュールはrapidFIRE本体を別途購入し使用するのが良いと思います。
どんな受信モジュールメーカーも、FATSHARK用のカバーは販売しているものと思うのですが、Orqa FPV.One用のカバーはどこにでもあるものではないので、rapidFIRE以外の受信モジュールを継続して使用したい方は注意が必要です。
肝心な装着感
FPVゴーグルのフェイスプレートのカーブについて、アジア人は古くから悩まされて来ました。
顔面の形状はアジア人の中でもかなりバリエーションがあると思いますので、こればかりは実際につけてみないとなんとも言えないところかと思うのですが、個人的な感想ではPilotの装着感はHDO2と同等もしくはHDO2よりPilotの方が少し良いように感じます。
ゴーグル上側、額のあたりのカーブはPilotよりもHDO2の方が自分にフィットしているかなと思うのですが、HDO2の場合ゴーグルの下側が頬骨に当たってしまっていて、額と頬骨がストラップに押さえつけられて固定している感じでした。
一方、Pilotは額のカーブはあっているのか、あっていないのかわからない感じではあるものの、付属のフォームのクッションによって緩やかに保持され、グラつくわけでもないし光も漏れないと言う程度の密着感です。
フォームは2種類付属しますので、好みに合わせて変更できます。
額はそんな感じなのですが、Pilotのカーブは全体的にHDO2のカーブよりも角度がきつい設計となっている為、頬骨が押し付けられる感じがほとんどありません。
結果的にストラップで押さえつけられているのは目の両サイド、こめかみのあたりです。
もしゴーグルの幅が狭く、こめかみのあたりに刺さるようなサイズだった場合、恐らくグラつくし非常に痛いハズなのですが、Pilotの場合はエンドの部分までしっかり広がっていますので、こめかみのあたりを包み込むように保持してくれます。
自分の場合、額と頬骨で支えていたHDO2よりもPilotの方が安定感があり、ストレスも少ないと感じています。
鼻の部分に関しては、残念ながら全然高さが足りず、PilotでもHDO2でも光が漏れますが、フライト中はほとんど気になりません。
むしろ、プロポのストラップを取り付け忘れた際などはこの鼻とゴーグルの隙間から覗いて金具を取りつけたりしています。
HDO2もPilotも、HDO2よりも前に使用していたFATSHARKのゴーグルよりはずっと快適で、どちらも使用上問題のないレベルかなと思ってるのですが、こればかりは個人差がありますので、HDO2を所有している方は参考にしていただけたらと思います。
アナログシステム最高のFPVゴーグル
Orqa FPV.One Pilotはアナログシステム最高のFPVゴーグルの1つと言え、その映像の鮮明さは凄まじく、見慣れたアナログFPV映像が逆に物足りなく見える程。
見辛くて困るからではなく、もっと綺麗な映像を楽しみたいが為に、思わずFPVカメラのシャープネスや彩度を調整し直してしまいます。
Orqa FPV.One Pilotは高品質のFPV飛行体験を求める方には絶対におすすめなのですが、HDO2も非常に優れたFPVゴーグルであるため、すでにHDO2などFPVゴーグルのフラッグシップ機を使用している場合、必ずしもPilotに買い換える必要は無いかも知れません。
自分は普段コンタクトレンズを使用していて目が乾きやすく、ファンの風が目に当たると非常にストレスなので、圧倒的にOrqa FPV.One Pilotが快適なのですが、それが気にならないと言う方もいるでしょう。
ファンが静かでフライトに集中できると言う点も、どんな騒音の中でも冷静でいられるメンタルの持ち主、もしくは機体にマイクを搭載していてイヤフォンでマイクの音を聞いている、という方にはこの部分もあまり関係ないのかなと思います。
グラフィカルなメニューや拡張性など、Orqa FPV.One Pilotには魅力が沢山詰め込まれているのですが、個人的にはHDO2の時からHDMI入力は愚か、ゴーグルを使用したDVR再生もほとんどしなかったので、拡張性やメニューの操作性についてはHDO2の時から特に不満がありませんでした。
不満はないものの、もしかしたら無意識のうちに「FPVゴーグルとはそういうもの」と思い込んで、色々な事を我慢していたのかも知れません。
今回感じたOrqa FPV.One Pilotの最も素晴らしい点は、純粋にFPV映像を見ながら飛行するという基本的な部分でしっかり良さや違いが体感できるところにあり、アナログシステムで現在実現されている「最高の飛行体験」を求める方には、検討する価値のある製品と言えそうです。