目次
Section 1
飛行モードの設定タブ
今回も引き続きPX4の設定を進めていきます。
前回送信機の設定で送信機の校正を行い、同じページでボタンのチャンネル割り当てを確認しました。
QGCの機体設定画面で飛行モードを選択すると、上記のページが表示されます。
この飛行モードページでは、どのボタンのどの位置に何の機能を割り当てるかを設定する事ができます。
飛行モードというのは、動作としては似たものでもファームウェアによって名前が違っていたり、逆に違う動作なのに似た名前になっていたりと、非常にややこしいものです。
間違って設定してしまうと非常に危険なので、新しいファームウェアに挑戦する時には必ずモードの動作を確認しておきましょう。
PX4には様々な飛行モードがあらかじめ用意されています。
今回はマルチコプターで利用できる、マニュアル操縦の飛行モードをまとめました。
モード毎の解説や調整できる項目は下記のPX4ユーザーガイドにそれぞれページが設けられていますので、今回は簡単にマルチコプターのモードを他のファームウェアと比較しながら見ていきたいと思います。
Flight Modes (Multicopter)
https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/
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Position mode
ポジションモードはGPSなどを使用して、水平および垂直の位置を固定するモードです。
簡単に言えば、スティックから手を離すとその場でホバリングしてくれるモードという事ですね。
PX4のマニュアル操縦モードカテゴリーの中では基本となるモードと言えそうですね。
操作方法は以下の通りです:
- ロール・ピッチスティック: 機体の前後および左右の地面に対する加速を制御します
- ヨースティック: 水平回転を制御します
- スロットルスティック: 上昇/下降の速度を制御します
このモードは、ユーザーの感覚としては Ardupilot の Loiter モードに相当するものと考えられます。
「地面に対する加速を制御する」という点がポイントで、INAV の POSHOLD は基本的にはスティックを操作した瞬間に水平方向に対してはマニュアル制御になる為、ここは大きく違う点かと思います。
INAV にも nav_user_control_mode というオプションが追加されているようなのですが、まだ試した事がないので、また別の機会にテストしてみたいと思います。
より詳しい解説は下記に記載されています。
Position Mode (Multicopter)
https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/position.html
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Position Slow mode
Position Slow mode は、速度とヨーレートが制限されたバージョンのポジションモードで、簡単に言うと動きが遅い Position modeという事のようです。
しかし、飛行モードのページではこのモードを選択することはできません。
デフォルトの設定はあるようなのですが、速度制限の具体的な数値は用途によって異なると言う事で、このモードでは速度制限の調整が可能との事。
他のファームウェアでは、モード変更によって速度制限をかけることはあまり見られないため、こうしたモードが用意されているのは興味深い点です。
設定の手順は少し複雑なようですので、興味のある方は以下のURLを参考にしてください。
Position Slow Mode (Multicopter)
https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/position_slow.html
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Altitude mode
Altitude mode は、スティックを離した際に水平位置はロックされませんが、垂直位置は保たれるモードです。
簡単に言うと高度維持モードという事ですね。
このモードは、Ardupilot の Alt Hold モードや INAV の NAV ALTHOLD に近い動作をします。
高度の制御はスロットルスティックによって行い、上昇および下降の速度を調整します。
より詳しくは下記のURLをご覧ください。
Altitude Mode (Multicopter)
https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/altitude.html
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Manual/Stabilized
Manual/Stabilized は、水平位置と垂直位置は保持されませんが、スティックを離すと機体姿勢が水平に戻るモードです。
これは、Ardupilot の Stabilize モードや INAV の ANGLE モードに相当するモードと言えます。
モード設定タブでは Manual と Stabilized を別々に選択できますが、その違いについての詳しい解説を見つける事ができませんでした。
より詳しくは下記のURLをご覧ください。
Manual/Stabilized Mode (Multicopter)
https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/manual_stabilized.html
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Acro
Acroモードは、Betaflight や KISS flight を使用した経験のある方にはお馴染みのモードですね。
このモードでは、スティックを離しても機体の角度はそのまま保持されるため、手動で水平に戻さないと機体がどこかに行ってしまったり、簡単に墜落する可能性がある、非常にエキサイティングでシンプルなモードです。
Acroモードは主にアクロバット飛行に用いられますが、人の操縦に依存してFCはあまり働いていないかと言うとそんな事はなく、風などの抵抗に対して機体の角度を保持し、スティック操作に対して迅速に反応するなど高度な制御を行っています。
Ardupilot にも同じ名前のアクロモードがありますが、最近試してみたところ、デフォルトではじんわりと水平に戻るという、アクロモードらしくない仕様になっていることがわかりました。
Ardupilot の場合、設定で解除可能ですが、ドキュメントには特に記載がないため、バージョンによって仕様が異なる可能性があります。
他のファームウェアでも同じ名前のモードが必ずしも同じ動作をするわけではないので注意が必要です。
PX4のアクロモードはまだ試していませんが、何か独自の設定がされているかもしれませんので、もし使用する場合は広い場所でテストしながら設定していくのが良いかと思います。
より詳しくは下記のURLをご覧ください。
Acro Mode (Multicopter)
https://docs.px4.io/main/en/flight_modes_mc/acro.html
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まとめ
今回はPX4のマニュアル操縦の飛行モードについて紹介しました。
マルチコプターには様々な用途のものがあり、「普通」というものは存在しませんが、一般にドローンとして認識されるマルチコプタータイプの機体は、GPSやその他のセンサーで位置情報を取得し、その場でホバリングできるイメージが強いと思います。
PX4では Position mode と言う事ですね。
今回の設定シリーズでは、Position mode で安定して飛行できることを目標とし、設定を進めていきます。
ただテストフライトの際、いきなり Position mode で飛行しようとすると、GPS制御や高度保持に問題がある場合、機体が暴れる可能性があります。
安全の為にまずは Manual/Stabilized モードで飛行し、機体の基本性能や設定に問題がないかを確認し、気になる事があればしっかり修正しておきましょう。
設定が間違っていると、離陸の時点でひっくり返ったりする事もありますので、一通りの確認が済むまではなるべくオート要素は少ない方が安全です。
その後、Altitude モードで高度保持に問題がないかを確認・調整し、最後に Position mode の動作を確認する流れが良いですね。
次回は PX4 Autopilot という名前の Autopilot のところ、自立型の飛行モードについてご紹介したいと思います。