ApexとApex DC
ImpulseRCからリリースされた新しいフレーム「ApexDC」ですが、APEXとどの程度の違いがあるのか、どの程度パーツが共通なのか、気になっている方もいらっしゃるのではないかと思います。
実際に運用するとなると、必要な時に細かいパーツの予備がなくイライラする事もあるので、特別に消耗品があるならあらかじめ覚悟して準備したいもの。
もし多くの部分でApexと共通なら、既にApexを使用している場合は導入のハードルが一気に低くなるので嬉しいですよね。
今回はApexDCを開封しつつ、並行して既に使用している通常のApexを分解・清掃しながら、ApexDCとApexの主にカーボンパーツを比較してみたいと思います。
ApexDCはApexもしくはApex HDと共通のパーツが多くありますが、ApexDC独自のものもあるようです。
スペアパーツが欲しい時など注意しないと間違えてしまいそうですね。
そもそもImpulseRC ApexDC 5" とは?
ImpulseRC ApexDCは、最近のフリースタイルでは一般的なCompressed Xスタイルのシルエットから、ボディ部分をぐっと前方に押し出したような形になっており、FPVカメラや記録カメラが低い角度であっても前方のプロペラが写り込みにくいという利点があります。
以前から主に撮影用のフレームとして、こういったスタイルのフレームがさまざまなメーカーからリリースされているので、似たコンセプトのものを見た事がある、既に使った事があるという方も多いのではないでしょうか。
RunCam Split Mini 2が登場した頃、軽量小型撮影機として似たシルエットのフレームが人気を博し、いくつかのメーカーからリリースされていた時期があったように思います。
”DEAD CAT”という呼び方は知らなかったのですが、RunCam Splitのような記録機能も持つFPVカメラで撮影を行う場合、FPVカメラよりも高い位置にカメラを搭載して撮影するよりもずっとプロペラが記録映像にしっかり撮影されてしまうので、前方のアームを左右に広げ視野を確保する必要性があるわけです。
では、今回ImpulseRCからリリースされたAPEXDC 5"は、それまでの似たコンセプトのフレームと比較して何が素晴らしいか、という点ですが、前方アームにはApex5" Armを、後方アームにはApex6" Armを使用する事で、これまでのApexと多くのパーツの互換性が保たれている点。
そして、後方のアームを長くする事でCompressed Xジオメトリを維持している点が挙げられます。
これまでの”DEAD CAT”スタイルのフレームは、後方アームの広がりが前方アームの広がりに対して小さいものがほとんどで、全体としてはバランスが崩れるため、フリースタイルフレームと比較するとハンドリングが悪く、フリースタイルの用途で使用する人は非常に稀だったのではないかと思います。
しかし今回のImpulseRC ApexDCは、ImpulseRC Apexと同様にMR STEELEと共同で設計されており、撮影用のフレームシルエットではあるものの、飛行性能や耐久性も妥協なく追求されているものと考えられます。
ImpulseRC Mr Steele ApexDC 5" フレームキット (Light Weight)
今回使用するフレームはImpulseRC Mr Steele ApexDC 5" フレームキット (Light Weight)です。
ImpulseRCの商品の中で、Mr Steeleが設計に大きく関わっているフレームには、Mr Steele特別版ともいうべきパッケージが通常版と合わせてリリースされるのが今となっては恒例となりました。
これまでのMr Steele版にはKISS 系のOSD等、エレクトロニクスパーツが追加で含まれていましたが、今回のImpulseRC Mr Steele ApexDC 5" フレームキット (Light Weight)にはTPUの追加パーツや軽量ネジ、フォームなどが含まれているのみで、エレクトロニクスパーツは含まれていません。
そのため、通常版との価格差が以前ほど大きくなく、どんなFCを使用している人でもMr Steele版を選べるようになりました。
上記写真の内容が通常盤のパッケージ内容です。
ImpulseRC Mr Steele ApexDC 5" フレームキット (Light Weight)には、それらに加えて上記画像の内容が含まれています。
内容としては
- GoProマウントとカスタムボルト
- Tracer Immortal-T マウント
- 7075-T6 ライトウエイトハードウェアキット
- コヨーテブラウン スキッド&バンパー
- ゴム製FC振動マウント
- XT-60ピッグテール
- 発泡ストリップ
- バッテリーストラップ
どれもあったら便利なものが多いですが、特にGoProマウントとカスタムボルトは別途購入したり、3Dプリンターで造形したりするのも手間なので、ここで手に入るのは嬉しいですね。
アルミのネジで軽量化するのはMr SteeleがAlienを使用していた時代から試みて来た事で、もうお馴染みといったところでしょうか。
Goproを固定するネジも軽量ネジが同封されていて、Goproに付属するネジは9.6g位なのに対し、付属している軽量ネジは1.4g位と、なかなかの重量差です。
Mr Steele版のパッケージには通常版のネジも全て同封されていますので、沢山のネジを入手する事ができます。
トッププレート
左がAPEX 右がAPEX DCのものです。
重ね合わせて確認しても、フロント部分はほとんど形状に違いがなく、これまでAPEXで使用していた3Dプリントパーツのカメラマウントなどは、そのまま使えます。
機首から3つ目のスタンドオフのネジ穴から位置がAPEXとは違っていて、一番機尾側は大きく形状が異なっています。
このAPEX DCのトッププレートはAPEXのものとは異なりますが、APEX HDとは同じものになりますので、APEX DCのトッププレートを壊した場合はAPEX HDのトッププレートを購入して交換する形になります。
カメラサイドプレート
こちらも同じく左がAPEX 右がAPEX DC。
トッププレートとLower メインCFに刺さる部分の位置と寸法は同じなので、これらは互換性があります。
つまり、通常のAPEXのカメラサイドプレートをAPEX DCで使用することも、またその逆も可能です。
パーツ自体のシルエットは全体として随分変更されており、APEX DCではFPVカメラの固定部分にTPUパーツが追加されています。
これにより、FPVカメラの振動が減少し、カメラがフレームから電気的に絶縁されるメリットがあるとのこと。
ちなみに、このカメラサイドプレートもAPEX HDのものと同じものです。
Lower Main CF
APEXの構造を理解していないとわかりづらいですが、APEXのメインプレートはLowerとUpperの2ピースになっていて、これら2枚のプレートでアームを挟み込み、メインフレームを形作る構造になっています。
ImpulseRCとしてはReverbからこのアイディアが採用されており、今ではさまざまなメーカーのフリースタイルフレームで採用されている構造です。
Lower Main CFは機首側(この場合画像上が機首方向になります)のプレートで、アーム以外に先程のカメラサイドプレートの下側が刺さるパーツになります。
左がAPEX 右がAPEX DCで、ぱっと見かなり形状が似ていますが、アームの取り付ける角度が異なるため、画像下側のネジ穴の位置は全て異なります。
Lower Main CFはAPEX DC独自のものになりますので、APEX DC用のものを入手する必要があります。
Upper Main CF
今度はUpper Main CFで、機尾側(この場合画像下方向が機尾)のメインフレームになります。
こちらも左がAPEX 右がAPEX DCですが、Upper Main CFはネジ穴の位置が全て異なり、全体的なシルエットも、比べると結構違う設計になっていますね。
Upper Main CFもAPEX DC独自のもので、破損して交換する場合APEX DC用のものを入手する必要があります。
アームキー
APEX DCでもアームキー(以前はキーストーンとも呼ばれていました)と呼ばれる、全てのアームの接点にはめ込むパーツが存在します。
アームのガタ付きを防止し、クラッシュ時の衝撃を分散するキーストーンを持つ構造はAPEXの特徴と言えるでしょう。
こちらも左がAPEX 右がAPEX DCですが、”DEAD CAT”スタイルのため、上下が非対称の形になっており、アームキーも当然APEX DCは専用のものを使用する必要があります。
ANTENNA CLAMP KIT or VISTA ANTENNA MOUNT
ApexではTBS Unify Pro 5G8 V3 (SMA)のSMAコネクターを固定できるCLAMP KITが付属していましたが、APEX DCではCaddx Vista用のアンテナマウントになりました。
Caddx Vistaは現状国内ではほぼ使用できないと考えられる為、VTXのアンテナ固定には工夫が必要そうです。
上記画像の上がANTENNA CLAMP KITを取り付けた通常のAPEX、下がAPEX DCになります。
APEXのANTENNA CLAMP KITと組み合わせる部分のスタンドオフは10mmでAPEX独自のものになりますが、その他の部分のスタンドオフの長さはAPEXとAPEX DCで共通になっています。
フレームの組み立て
APEX DCの組み立てはAPEXとほとんど同じなので、今回は割愛します。
Apexの組み立ては何回かに分けて以前にご紹介しましたので、下記の記事をご覧ください。
https://dayscape.jp/blogs/all-blogs/apex-build-1-parts-introduction-and-mainframe
ロックナットについて
APEXの組み立てでは、ロックナットをUpper Main CFに取り付ける作業があります。
最近ではロックナットの取り付けが必要なフレームも一般的になりましたし、Lumenierのように、もう取り付けた状態で出荷してくれるメーカーもありますね。
意外と、ロックナットをねじ込む作業が苦手な方もいるのではないでしょうか。
個人的におすすめなのが、Ethix Prop Toolを使用してねじ込む事です。
Hexドライバーだとドライバーが負けて、根元から回ってしまう事があり、L型の六角レンチだと真っ直ぐ確認しながら回しにくかったりします。
Ethix Prop Toolならかなり力をこめられますし、真っ直ぐ確認しながらねじ込む事が可能です。
ロックナットの反対側の面には必ずコーンワッシャーを当てて、押し付けられるカーボンプレートの面積を大きくし、力を分散します。
ねじ込む前にロックナットを一周よく見て、ちゃんと垂直に入っていることを確認し、ゆっくり力を加えてねじ込んでいきましょう。
勢いよく回そうとすると、勢いをつけた拍子に傾く場合があるので、じわっと力を入れて行くのが良いと思います。
ちなみに、ロックナットを取り付ける場所を間違えてしまった場合、コーンワッシャーをロックナット側に逆向きに当てて、ネジでロックナットをコーンワッシャー側に引っ張る形に力を加えれば、ロックナットを外す事ができる可能性があります。
ただ、カーボンは削れてしまいますし、周辺にダメージが残る場合があるので、なるべく間違えない方が良いですね。
メインフレーム
左側がAPEX、右側がAPEX DCのものです。
メインとなる部分を比較すると、APEX DCの方がアームキーが押し潰されたような形状になっていて、随分アームの角度が違っているのがわかります。
APEX DCの上にAPEXを重ねてみました。
重ねてみるとAPEX DCの方がひとまわり大きなシルエットになっているように見えます。
モーターの中心から中心までの距離を測ってみると、下記のようになりました。
横方向
APEX DC 約200mm
APEX 約180mm
縦方向
APEX DC 約135mm
APEX 約133mm
対角
APEX DC 約240mm
APEX 約223mm
全体としても大きくはなっているのですが、縦横の比率が大きく変わっていて、通常のAPEXを横に広げたようなシルエットと言えそうです。
撮影用APEX
シルエットが異なるので、ハンドリングに違いを感じるとは思うのですが、ImpulseRC Apex DCは、通常のAPEXの良さを大部分引き継いでいると言えそうです。
これまでも様々なフレームが考案されており、今では沢山のバリエーションがありますが、Apex DCはかなりフリースタイル寄りの構造になっています。
より低いアクションカメラの角度での撮影に対応した撮影用のAPEXのバリエーションと考えると、ちょうど良いかも知れません。
Apex DCをメイン機として使い込むのも面白そうですが、フリースタイル機は消耗が激しい為、いざ撮影したいという時にどこかが調子悪かったり、といった経験がある方も多いのではないでしょうか。
そんな時がしばしばやってくるという方は、日々使用するAPEXとは別に、撮影用のApex DCを用意しておいて、ベストなコンディションで保っておくという使い分けも、良いのではないかと思います。