Skyzone Cobra X V2 Review
FPVゴーグルというのは比較的高額な商品も多く、装着感も個人差がありますので、選ぶのが特に難しい部類の商品ですよね。
実際につけてみないとなんとも言えない部分があるとしても、多少は参考となれば良いなと考え、今回はSkyzone Cobra X V2についてレビューしてみたいと思います。
1画面タイプの高性能FPVゴーグル
個人的には、ずっと2画面タイプ(2眼タイプと呼ばれる方が一般的かもしれません)のFPVゴーグルを使用してきましたが、メガネをつけたまま使用できるものもあったら良いと思い、今回1画面タイプのFPVゴーグルを試してみる事にしました。
1画面タイプのFPVゴーグルは主に入門用として、較的低価格のモデルが多いのですが、Skyzone Cobra X V2は1画面タイプとしては決して安くないゴーグルです。
Cobra X V2全体的にスペックが高く、Skyzoneの誇るSteady View(受信モジュール)はImmersionRC rapidFIREに匹敵するほどの性能との話で、これなら受信モジュールの性能でストレスを感じる事はなさそうですね。
細かいスペックに関しては所々で触れはするものの、網羅しないので、その辺りは商品ページをご確認ください。
メガネのまま使用可能
1画面タイプに興味を持った一番の理由はメガネの時にそのまま使用できる事です。
自分は普段コンタクトレンズで過ごし、これと言って予定がない時にだけメガネを使用しています。
これまでFPVゴーグルを使用する日はコンタクトにする事で、メガネとFPVゴーグルの同時使用を避けてきましたが、メガネの日にもリラックスしてFPVしたいなと考えていました。
また、FPVカメラのフォーカス調整をFPVモニターでチェックすると、いまいちバシッとピンが来ない感覚があり、FPVカメラのレンズ交換や、レンズの締め直し作業を行う時もわざわざコンタクトをしていましたので、その作業もメガネのままできるなら、フライトだけでなくベンチワークでも役に立ちそうだなと思います。
自分はフレーム部分の高さが約42mm、幅が約140mmのメガネを使用しているのですが、メガネがガチャリとSkyzone Cobra X V2の中に入りメガネのまま使用可能です。
Cobra X V2のゴーグル内部は高さ約42mm(自分のメガネはギリギリ入る位ですね)、幅が約144mm(メガネのつる部分を納められるよう、その部分が広がった形状になっています)くらいなので、メガネのフレームが大きいものだと入らないかも知れません。
ゴーグルを外した瞬間にメガネの視野が広がるという体験は、まさに期待通りのものでした。
気をつけないとメガネかゴーグルどちらか、もしくは両方のレンズを傷つけてしまうのではないかと気になったのですが、しっかりメガネをした状態であればゴーグルのレンズとの距離は十分にあるようで、そんなに心配はなさそうです。
また、HDO2ではファンの風が直接目に当たり、乾燥している時期は目が渇いてストレスだったりするのですが、Cobra X V2はゴーグル内の空間も広く、ファンの強度も変更できる為、目が乾くような感じもありません。
ボタン操作は快適
ゴーグル上面右側には2つのボタンと1つのシャトルホイール、左側には1つのボタンとシャトルホイールが搭載されています。
HDO2とは全然操作方法が異なりますので、初めは勝手がわからなかったのですが、色々押しているうちに大体の事は理解でき、マニュアルを熟読しなくてもすぐに慣れるかと思います。
チャンネルのオートサーチはもちろん、草むらに墜落した時などに便利なDrone Finder機能も搭載されているのですが、そういった長押しでアクセスする機能も少しあるので、マニュアルを読みながら操作を試すと良いかと思います。
シャトルホイールは転がすとカチカチと歯切れの良い抵抗感があり、つい回しすぎたりする操作ミスはほとんどありません。
ボタンもカチッと押した手応えがあるので、メニュー階層などの好みは個人差あるとしても、操作自体は快適です。
HDO2では操作が面倒なので、よほど差し迫った理由がない限りDVR映像の再生して確認しようという気にはなれないのですが、Cobra X V2なら気軽に再生してみようかなという気持ちになります。
DVR映像が綺麗
上記画像はDVR映像を記録し、PCで表示させてスクリーンショットを撮り、左右でHDO2(左)とCobra X V2(右)を比較したものです。
この画像を作成するにあたり色々変換されているので、純粋な状態とは言いづらいのですが、変換するプロセスは共通で、基本的には拡大する方向で変換しているので、参考にはなるかと思います。
全体的にHDO2の方がぼやっとして見えます、表示できる解像度はHDO2が1280 x 960、Cobra X V2が1280X720なので、HDO2の方がスペックとしては高いのですが、なぜでしょうか。
さらに拡大すると、HDO2の方の映像には細かい正方形が結構しっかり認識できるのに対し、Cobra X V2の方は、そういったブロックはそこまで気になりませんね。
スペックを見ると、どちらもDVR録画のビットレートは6Mbpsなのですが、圧縮コーデックが異なり、HDO2はMJPEG、Cobra X V2はH264となっていて、この圧縮で発生してしまう正方形がHDO2のDVR映像が全体的にぼやけて見える原因になっています。
くれぐれもご注意頂きたい点は、これはDVRで動画ファイルに保存する際の圧縮の話なので、リアルタイムで表示されているFPV映像の品質とはまた別の話です。
ファイルフォーマットとしては、HDO2がAVIでファイルとして残るのに対し、Cobra X V2はmov形式で保存されます。
Cobraには上級モデルのCobra Xと、低価格モデルのCobra (S)があり、Cobra (S)の方はDVRのコーデックがMJPEGのようなので、Cobra (S)ならHDO2とほとんど差がないかも知れません。
細かいところですが、記録カメラを載せない軽量な機体でDVR映像を楽しむとか、臨場感のあるDVR映像をSNSで共有するといった使い方も頻繁にするなら、DVR映像が綺麗なのは魅力的と言えそうです。
また、HDO2のSDカードは内側の額の部分に差し込む構造になっており、これが結構アクセスし辛いのですが、Cobra X V2は非常にアクセスしやすいところにあり、カードの取り出し、差し込みも快適です。
SteadyView レシーバー
受信モジュールの部分は蓋を開ける事ができ、SteadyView レシーバーを取り外す事ができます。
上記画像は左がImmersionRC rapidFIRE、右がSteadyViewなのですが、ピンの数は同じですね。
rapidFIREをCobra X V2に取り付ける事も可能でしたが、ピンアサインが不明で、壊れてしまったら困る為、電源は入れていません。
また、rapidFIREの方が厚みがある事と、操作用のスイッチがある為、当然蓋も取り付けることができません。
長距離のテストを行った訳ではありませんが、SteadyViewの性能も普段使用する範囲では全く問題なく、SteadyViewのままでも満足できる受信性能でした。
しばらくゴーグルを購入していませんが、購入した時点で付属している受信モジュールで満足できるというのはそもそも凄い事ですし、色々なパーツを揃えなくて良いのでコスト面でも非常に良いですね。
別メーカーの受信モジュールがどの程度便利に使用できるかは確認できていませんが、作りとしては拡張性があると言えそうです。
ゴーグル下面
ゴーグルの下面には18650バッテリーを搭載可能で、その周辺にはいくつかのコネクターがレイアウトされています。
SDカードのスロットもこの面にあり、アクセスしやすいです。
ご存知の通り、DC INにLipoバッテリーを接続して動作させる事ができるのですが、Skyzoneの素晴らしいところは6.5-25.2Vで動作できるという点。
これは2セル〜6セルのバッテリーで給電できるという事になるのですが、HDO2は2セル〜3セルでの給電に限られるので、
HDO2より豊富な種類のバッテリーから電源を取る事ができます。
さらに、USBタイプCコネクターから5Vで給電も可能なので、リポバッテリーではなくモバイルバッテリーなどの電源で動作させる事も可能です。
この辺りはよく言われるSkyzoneの良さかと思うのですが、Cobra X V2を動かす為のバッテリーはフライトに行く際には大体何かしら持っている事が多いので、わざわざ準備しなくても良いのは嬉しいですね。
基本的には、Cobra X V2が気に入っているので、良いレビューがメインなのですが、この電池のボックスについてはネガティブな感想を言わざるを得ません。
ボックスがロックされている爪が非常に硬く、素手で開けようとすると自分の爪が割れてしまいそうです。
マイナスドライバーのような工具を使用し、バッテリーボックス側の爪が割れないか心配しながら慎重に開けるのが良いと思うのですが、マイナスドライバーを使用してもすんなりとは開けられず、ゴーグル側の爪付近を傷つけながらかなり力を込め、ようやく開けられたという感じです。
HDO2が294g程度(rapidFIREとアンテナ・ストラップ装着)なのに対し、Cobra X V2はバッテリーなしの状態で376g程度(アンテナ・ストラップは装着)なので、バッテリーを使用するとさらに重くなってしまうとも思いますし、バッテリーボックスの取り外しが非常に大変だという事もあり、自分はケーブルで給電する形で使用したいと思います。
気の利いた付属品
フェイスプレート部分(顔に接する部分)に貼り付けるクッションとゴーグルストラップなどは、この記事ではすでに取り付けた状態で撮影していますが、パッケージの開封時点では取り付けられておらず、付属している形となります。
それに加えて、上記画像の4本のケーブルが付属しています。
左から映像出力用のケーブル、USB to タイプCの給電ケーブル、Head Trackingで使用するケーブル(使用した事がありませんので使い方がわかりません)、リポバッテリーから給電する為のケーブル、と、HDMIケーブルは付属していないのですが、それ以外に必要なものは一通り揃っています。
Cobra X V2のコネクターに対応するケーブルを探して追加で購入する必要がないので、ほとんどのインプットやアウトプットが付属品で試せるというパッケージになっています。
さらに、フェイスプレート用のメインのクッションの他に、鼻の部分にクッションを追加するフォームや、ちょっとどこに使うかわからないのですが、四角いフォームが4つ同封されています。
フェイスプレートのカーブは非常にアジア人向けで、自分には鼻の部分以外ピッタリフィットしたのですが、これらのフォームを使用してフィット感を多少調整する事もできそうです。
鼻の部分のフォームは、なしでもそこまで不満なく使用できていたのですが、この後貼り付けてみました。
フォームを使用してもまだ隙間があり、フォーム自体が鼻に当たる感じではないのですが、遮光性が多少高まった印象で、漏れる光も全然気にならないのでそのまま使用しています。
何よりも重要な飛行中の見え方
これまで細かい部分の紹介をしてきましたが、FPVゴーグルなので、細かい部分はオプションに過ぎず、最も重要なのはFPVでフライトしている時の見え方です。
Cobra X V2を使用して、初めに気になった点はHDO2と比較すると画面が離れて見える事でした。
FOVはHDO2が対角46度なのに対し、Cobra X V2は50度、FOVとしてはCobra X V2の方が上回っているのですが、ゴーグルのレンズがHDO2の方がずっと近くにあり、まるで映像の中に入り込んでいるような視界を提供しています。
一方Cobra X V2はメガネが間に入るくらいの距離がある為、映像の中に入り込んでいるというよりは、巨大スクリーンを独り占めしているという印象。
FPVでのフライトに置いて、機体との一体感や瞬間的な判断と操作は非常に重要な要素である為、この点においてはHDO2の方が圧倒的に優れていると感じました。
慣れも当然あると思うのですが、自分の場合Cobra X V2ではHDO2と同じようにフライトする事はできません。
HDO2にはトータルでCobra X V2の2倍以上のコストをかけている為、やはりそこには大きな差があるようですね。
また、これも慣れの問題が多少あるとは思うのですが、長時間使用していると目が疲れます。
Cobra X V2の内部にはレンズがあり、さらに画面をミラーで反射させている為、直接画面を見ているわけではないのですが、わかりやすく例えると目の割と近くでスマホを見続けている状態に近いです。
その為、適度に休憩を取りながらの使用が良いかと思います。
映像を冷静に見る事ができるFPVゴーグル
自分の場合Cobra X V2では、HDO2を使用した時のようなパフォーマンスを発揮できないのですが、だからと言ってCobra X V2が全然使い物にならないと思ったわけではありません。
Cobra X V2でフライトする事は予想外に楽しいもので、トリックもせず、ギャップもなく、地面スレスレを飛行しているわけでもない、リスクとは無縁なゆったりした飛行であっても、フライト映像の魅力を目の前の巨大スクリーンで味わう事ができます。
逆に、操作に荒っぽさがあるとフライト中であったとしても結構気になってしまうので、このあたりのケアを意欲的に行う事で、フライト全体のブラッシュアップにもつながるのではないかと思います。
アクションカメラで撮影した映像を見ている時にも近い感覚ですが、フライト中なので当然リアルタイムに操作が反映され、自分にとって映像的に気持ちの良いスティック操作の感覚を色々試して見つけられるというイメージですね。
また、フィッティングが2画面タイプほどシビアではないので、他の人にフライトを見てもらう時や、INAVなどのGPSホバリングが可能な機体で目視とFPVを使い分けて飛ばす時にも良さそうです。
2画面タイプだと、他人に見てもらう際にレンズの調整方法から教えるのは意外に大変なものですし、急いで装着するとあまりうまくフィットせず、視界が不鮮明なままフライトしなければならない状況も発生しがちですが、1画面タイプだととりあえず付ければ大体よく見えるので、このあたりは非常に便利です。
自分は固定翼はまだやった事がないのですが、固定翼のFPVであったり、飛ぶものに限らずあらゆるタイプのFPVプレビューには、2画面タイプよりも使いやすかったり、見ている映像が楽しい場合もありそうだと感じました。
そもそもFPVフリースタイルとは
この記事はCobra X V2に関する記事なので、読んでいる方の中にはFPVフリースタイルに興味がない方も当然いらっしゃるかと思うのですが、主にFPVフリースタイルに熱中している自分の記事なので、その辺りは多少大目に見ていただけたらと思います。
いい機会なのでそもそもFPVフリースタイルとは、という事にも触れてみましょう。
”Freestyle is an art form,and it represents the most subjective kind of FPV flying.Pilots showcase their skills by moving through an environment while stringing together a series of fluid acrobatic tricks and maneuvers.The goal is simple: fly smooth, make it look cool,and entertain the audience.”
上記はCHRISTIAN M. MOLLICA氏によって執筆されたFPV FLIGHT DYNAMICSで、FPVフリースタイルに関して説明されているパートの冒頭の文章です。
この本ではレースやフリースタイルを含む、現代のFPVクアッドコプターについて丁寧にまとめられており、ほとんど知識のないビギナーレベルの方でも一通りの知識や、上達する為の練習方法を知る事ができる内容となっています。
言葉で表現しづらいFPVフライトのテクニックをわかりやすいイラストや写真を駆使して巧みに説明しているだけでなく、FPVドローンを運用していく上で必要な膨大な知識に関しても一通り網羅されており、ここまでしっかりまとまっている情報は現段階で他にないと思いますので、個人的にはほどんどバイブルと言っても良いものかと思っています。
英語の本なのですが、電子書籍版であれば翻訳しながら読めますので(リーダーにもよるかも知れませんが、かなり強引な翻訳で、原文も確認しないと全く意味が取れない箇所もありますが)オススメです。
話が逸れて本の紹介になってしまいましたが、上記の文章を英語がわからないながら翻訳すると、下記のようになります。
“フリースタイルは芸術の一つの形態であり、最も主観的なFPVの飛行を示しています。パイロットは、流動的でアクロバティックな技や操作を組み合わせながら、環境の中を移動して自分のスキルを披露します。目標はシンプルです:滑らかに飛び、かっこよく見せ、観客を楽しませる。”
ここで注目したいのは、it represents the most subjective kind of FPV flyingという部分です。
例えばレースに関しては順位であったり、タイムであったり、客観的に比較できる評価基準が存在しますが、FPVフリースタイルはそう言った客観的な評価に依存せずに成立しているという事が最大の特徴と言えそうです。
FPVフリースタイルとは、パイロットそれぞれの、自分の表現の追求という一点にのみ支えられて進化し、様々なスタイルが形作られ、世界中に普及し、現在のように幅広いパーツ数が市場に存在する程の人気を獲得したというわけですね。
FPVフリースタイル=トリックというイメージを強く持たれている方も多いとは思うのですが、トリックというのは1つの手段であって、FPVフリースタイルの目的ではありません。
優しい言い方をすれば「好きに飛ばせば良い」のがFPVフリースタイル。
厳しい言い方をすると「自分が本当に好きなフライトとはどのようなものか、自分は本当にそれを表現できているのか、その魅力を他者に伝える事ができているのか」を常に自問自答し、スキルを磨き続けるのがFPVフリースタイルという感じでしょうか。
ここで唐突にゴーグルの話に戻るのですが、Cobra X V2はこの「主観」という部分でHDO2とは特徴が異なるので、自分にとってはそれが結構新鮮で、その面白さが期待を上回るものでした。
全体としては、Cobra X V2は良い意味で守備範囲が浅く広いFPVゴーグルと言え、色々なタイミングで持っていると役に立つFPVゴーグルに仕上がっていると言えそうです。