なんと15回にも渡って紹介して来たArmattan Badger 5" Kit (バンドル)に関連する記事ですが、今回が最後になります。定期的に更新が滞ったりしていたので、随分時間がかかりましたが、ようやく完結ですね!
今回emuflightでテストを繰り返していた際に撮影した動画を一部まとめてみましたので、もしよかったらご覧頂けたらと思います。
前回記事でご紹介したRate Dynamicsを変更するとフィーリングが簡単に、感覚的に変更できますので、色々試して頂くと面白いと思います。
今回はemuflightのPID Tuningタブ、PID Settingsの右側の項目を1つずつ見て行きましょう。
上記はデフォルトの数値です。
まず1番上のThrottle Boostは皆さんお馴染みのものかと思います。
Githubを調べてみるとBetaflight 3.4で導入されたパラメーターのようで、emuflightがBetaflight3.5から枝分かれしたものであるような話なので、継続して使用されている、優れた発明だったという事でしょう。再度調べてみると、基本的にはスロットルのフィードフォワード係数で、ハイパスフィルターを通過したRCスロットル信号に対してアクティブになる仕組みのようです。
簡単に言えば、急激にスロットルをあげる操作に対して信号をブーストするパラメーターで、利用することで機体がパワーアップした様に感じられます。
入れすぎるとスロットルの挙動が荒く、制御しにくくなります。
次にiDecay。ここから暫くemuflight特有のパラメーターですね。
詳細は下記のURLをご覧ください。
https://github.com/emuflight/EmuFlight/wiki/i_decay
このパラメーターはシャープな動きの間に蓄積されるIの増加に起因するバウンスバックなどを減らすパラメーターだそうです。 どうやらシャープな動きでIが過剰に蓄積される事をiterm windupと呼ぶみたいなのですが、iterm windupを検知した場合iDecayが1の時は1倍、2で2倍、5で5倍早くiを減衰するという設定項目。
下記の記事でもIによって引き起こされるバウンスバックについて取り上げました。
Armattan Badger 5" Kit (バンドル) <9> PID Tuning 3
今回問題を感じなかったのでデフォルトのままにしたのですが、説明を読んでみるとiDecayは素晴らしく便利なパラメーターなのではないかと思います。
iDecayの下に並んでいるEmuBoost、EmuBoost Limit、EmuBoost Yaw、EmuBoost Limit Yaw、D Boost、D Boost Limitについての詳細は下記のURLに記載されています。
https://github.com/emuflight/EmuFlight/wiki/Emu-Boost
現在のemuflight 3.xにはPIDsの中にFeedForwardの項目がなく、シンプルですがこのEmuBoostがそれに代わるパラメーターになっているとの事です。
基本的にBoostの値を上げていくとスティックを大きく動かした際の動きがより積極的になり、EmuBoost Limitは数値が高いほどEmuBoostを制限するという関係性のようですね。逆に、EmuBoost Limitの数値を上げていくと、よりEmuBoostが制限されると。
この設定値のバランス感に関してはなかなか難しそうで、自分もまだ消極的に数値を上げてみる事しかできていないのですが、下記の前回記事で紹介したRate Dynamicsと組み合わせて追い込めばかなり有機的な高速回転への移行が可能なのではないかと思います。
Armattan Badger 5" Kit (バンドル) <14> emu PID 設定 1
DBoostに関しては、基本的にEmuBoostと同じ仕組みで作動するDのブーストとの事ですが、デフォルトでは0のオフになっています。自分はまだ必要を感じなかったので有効にしていませんが、使用するならPIDの調整が必要になる場合もあるとの事です。
D Boost Limitの下にあるFeathered PIDsに関しての詳細は下記URL、といってもそんなに多くは記載されていません。
https://github.com/emuflight/EmuFlight/wiki/Feathered-PIDs
読んでみた感じ、デフォルトの100というのは測定ベースのdTermの計算方法で、この方法はBetaflightで使用されているものだそうです。逆に、0にするとエラーベースの計算方法というものになり、この方法はKISSで使用されているものとの事。
50だとこの二つの方法の比重がちょうど半分ずつになるみたいですね。現状、デフォルトで特に問題を感じなかったので自分は100のまま変更していません。
その次のiTerm Rotationです。あれ、なんか見たことあるけどなんだっけな、と思い改めて調べると下記に説明が出ていました。
https://github.com/betaflight/betaflight/wiki/Tuning-Tips-for-Betaflight-3.4
Betaflight3.4からずっとあったわけですね。Betaflightでは理解もせず、気にもせずオフのままにしていましたが、emuflightではデフォルトでオンです。改めて説明を読んでも、自分はちょっとよく分からなかったです。
emuflightはYaw制御が気持ちコントロールしやすいなと思っていたのですが、これのお陰なのかどうかはもうちょっと検証してみないとよくわかりません。自分はデフォルトのままオンにしています。
その下のiTerm RelaxはBetaflightでもお馴染みですが、emuflightではRoll/PitchとYawがそれぞれ設定できるのが新鮮ですね。しかも先ほど紹介したiDecayパラメーターもあるので、鋭く曲がりたい方はBetaflightよりも数字を上げやすいのではないかと思います。
下記のURLに説明が記載されているのですが、ちょっとこの説明ではわかりづらいなと思いました。
https://github.com/emuflight/EmuFlight/wiki/iTerm-Relax
iTerm Relaxの概要に関しては、Betaflightの解説の方がイメージを掴みやすいかと思いますので、ご興味のある方は下記のURLも合わせてご参考ください。
https://github.com/betaflight/betaflight/wiki/I-Term-Relax-Explained
ちなみに自分は上記画像のように調整してみました。初めの動画はこの記事のシリーズで紹介した設定値で飛行したものです。
変更したのは緑色で示したEmuBoostを少し上げた事と、赤色で示したI-Term Relax Roll/Pitchを13に、こちらも少し上げたのみです。全体としてデフォルトをベースに消極的な変更ですが、自分としてはそんなに不満なく仕上がったかなと思います。
さて、今回はemuflightのPID Settingsの右側の項目をざっと見てきたわけですが、ドキュメントはBetaflightの方がずっと充実していて、emuflightはなんとなくしか分からない部分が大きいのかなと思いました。
最終的によくわからなくても、うまく飛べばそれで良いと思っている自分みたいな方にはぴったりだと思います。
飛行制御であったり、どのようにプログラムされ機能しているか、という点に関しては、専門の方でないとしっかり全体を理解するのはどちらにしても難しい事だと思いますし、自分は全然わかりません。
極端に大きい、もしくは小さい機体だとか、モーターと全体の重量とのバランスが特徴的である場合。ちょっと特殊なモーターの数であったり、特殊なフレームの形であるなど、比較的マイナーな構成でトラブルを抱えた場合は、圧倒的にユーザーは多そうなBetaflightの方が解決の糸口を見つけやすい可能性も高いです。
Betaflightは勉強すれば、勉強しただけ機体への理解が深まる感じがあり、しかもその基本的な知識は他のフライトコントローラーでも役に立ったりするので、そういう面白さがある気がします。
一方、FPVフリースタイルという形で、トリックにチャレンジしたり、スムーズでアグレッシブな飛行を突き詰める中でBetaflightに不満を覚えた方は、Betaflightの勉強を続けるのも1つの方法ではあるものの、Betaflightを理解するためにはログを見て、設定を変更し、とにかくテストを繰り返す必要があるので、結構時間がかかってしまいますよね。
当然勉強不足の可能性もあるのですが、もしかしたら、自分のスタイルとBetaflightの相性が良くないということも考えられます。Betaflightと機体の相性が良くない可能性もあるかも知れません。
Emuflightはデフォルトでもなかなか良く飛ぶ印象で、今回もほとんどログを見ずに設定を行いました。もしEmuflightのデフォルトで印象が悪くないなら、その後はどんどん練習しながら、ちょっとずつ設定を変更して自分に合うように微調整していけばよいので、ずっと時間を練習に費やせると思います。
emuflightも多くのFC基板をサポートしているので、Betaflightでストレスを感じている方は試しに一度トライしてみると面白いかと思います。
長かったですが、Armattan Badger 5" Kit (バンドル)に関連する記事は一旦これで完結となります。更新が遅かったですが、毎回楽しみに待っていてくださった皆様、ありがとうございました!