目次
Section 1
センサーやラジオのキャリブレーション
前回の記事 Ardupilot Rover の製作【3】で Ardupilot Rover のファームウェアをFCへフラッシュし、フレームタイプの設定を確認しました。
PX4の機体作成の記事でも紹介しましたが、途中でフレームタイプを変更すると全体の設定が変わってしまう可能性も考えられますので、ファームウェアをフラッシュしたら設定作業を始めるに前にフレームタイプの設定を初めに確認しておく必要があります。
設定は Mission Planner の必須ハードウェアの項目を上から追っていくと分かりやすく、フレームタイプの次に Accel Calibration、コンパス、ラジオキャリブレーションと3つのキャリブレーションが並んでいます。
今回製作しているCC-02をベースとしたRoverでは、上記の3つのキャリブレーションがFC側としては主なものとなりますが、追加で他のセンサーをつけている場合、当然これら3つのキャリブレーション以外の作業が必要になるものもあります。
そういったものはセンサーの種類や製品によってキャリブレーション方法やパラメーターの設定値が大きく異なるものも多い為、製品ごとに手順が紹介されている場合も多く、製品のメーカーから提供される情報とArdupilotドキュメントをよく確認しながら作業する形になります。
センサーの他にも、パーツ構成によってはFC側からの操作でESCキャリブレーションが必要です。
今回のRover製作では、車両に搭載しているブラシモーターのESC側でFCの出力信号域に合わせる形でキャリブレーションを行いました。
ESC側でキャリブレーションしている為、基本的にはESCの取説にしたがって作業する形となりますので、この辺りは機体タイプや搭載パーツに依存する部分も大きいのかなと思います。
Accel Calibration、コンパス、ラジオキャリブレーションの3つはArdupilotであればほとんどの機体で必要な作業であり、特に今回製作したRoverにおいてはこの3つのキャリブレーションでセンサー構成は完了に近い状態となりました。
Ardupilotを利用する上で毎度必要になる作業ですので、今回から3回に分けてこれらのキャリブレーションを紹介していきます。
Section 2
Accel Calibration(加速度計の校正)
今回は accelerometer(加速度計)のキャリブレーション作業を紹介します。
Accel Calibration(加速度計の校正)に関してArdupilotドキュメントでは下記のページにまとめられています。
https://ardupilot.org/copter/docs/common-accelerometer-calibration.html#calibration-steps
加速度計の校正を行う前に、FCの向きが正しい形で搭載されているか確認します。
Ardupilot では AHRS_ORIENTATION というパラメーターでボードの向きを設定できるオプションがありますが、ボードの矢印が示す向きを機首方向に向けて取り付けられるのであればその方が楽ですので、なるべく方向を合わせて取り付けましょう。
上記写真では確認しにくいのですが、水色の円で示したところに矢印の表記があり、その方向と機首方向を一致させて取り付けています。
Section 3
3-axis キャリブレーション
これまでと同じ手順でPCとFCを接続し、MAVLINK(今回の場合USB)経由で Mission Planner と接続します。
Accel Calibration のページに移動するには、①の初期設定タブをクリックし、②のAccel Calibration タブをクリックします。
ここまでの作業で既にお気づきかと思いますが、FCとの通信状況に応じて初期設定やその他のタブで画面左側に現れる項目は変化しますのでご注意ください。
上記画像のABCで示した通り、3つのボタンが表示されます。
Aの 3-axis キャリブレーションというものが一番重要で、ドキュメントにもそれ以外のものについては簡単にしか書かれていないのですが、自分はいつもFCを機体に搭載した状態で上から一通り実行する事にしています。
早速一番上の 3-axis キャリブレーションを実施しましょう。
矢印で示したボタンを押すとボタンの下に「Please place vehicle level」と表示されます。
機体がなるべく水平の姿勢で静止している事を確認して再度ボタンをクリックします。
すると、ボタンの下のメッセージが「Please place vehicle LEFT」に変わりますので、今度は機体の左側を下にし、垂直に立てた状態で静止させ、再度ボタンを押します。
ボタンを押すごとに次々と姿勢を求められるので、指示の通りの姿勢でボタンを押す作業を繰り返します。
上記は Mission Planner ではなくQGCの Accelerometer Calibration 実施画面に姿勢の名前を書き加えたものです。
その為、Mission Plannerで上記の画面が表示されるわけではないのですが、固定翼機などのイラストで考えると非常に分かりやすいですね。
指示される姿勢は上記の6種類です。
キャリブレーション完了後、自分は一応 Mission Planner の接続を切ってFCを再起動し、再度 Mission Planner に接続しています。
Section 4
1-axis キャリブレーション
残る二つのキャリブレーションに関しては、機体を水平、つまりLEVELの姿勢で静止させてボタンをクリックすると完了するという簡単なものです。
3-axis キャリブレーションは必ず必要になりますが、1-axis キャリブレーションはもしかしたらやらなくても大丈夫な場合もあるのかもしれません。
機体が大きすぎて搭載状態では 3-axis キャリブレーションが実行できないという場合は、FCを取り付ける前にFC単体で 3-axis キャリブレーションを実施しておいて、機体に搭載した後にCで示した Simple Accel Cal を実施するという方法もあるようです。
ただし、やはり機体にFCを搭載した状態で 3-axis キャリブレーションを実施するのが基本ですので、余程機体が大きいなど特別な都合がある場合を除いて、基本に従うのが良いと思います。
今回使用している MATEKSYS F405-STD はUSBの5V給電でボード全体が起動するFC基板なのですが、基板タイプのFCにはバッテリー接続しないとボードに搭載されたセンサーが起動しないものもあります。
何度やってもキャリブレーションの途中でフリーズする場合はセンサーをしっかり認識できていない可能性もありますので、バッテリーに接続してキャリブレーションを実施するなども試してみるのが良いと思います。
今回は加速度計の校正を紹介しました。
Mission Planner では Q GroundControl のようにイラストが出ないため、初めは少し分かりづらいかもしれませんが、作業自体は非常に簡単です。
次回はコンパスの校正を紹介したいと思います。