目次
- ImpulseRCの閉店
- 「本物(オリジナル)」を探して
- ALIEN - フリースタイルフレームの原点
- 「長く使えるフレーム」の価値
- MR.STEELE と ALIENが描いた時代
- REVERB -フリースタイルの多様性
- Micro ALIEN / Micro REVERB - U199の挑戦
- APEX - 一つの到達点
- ImpulseRCと過ごした時代
Section 1
ImpulseRCの閉店
2026年1月22日をもって、ImpulseRC はその活動を終えました。
比較的最近 FPV ドローンを始めた方にとっては、ImpulseRC というフレームメーカーは、あまり馴染みのない存在かもしれません。
あるいは、FCをPCに接続してもアクセスできない、DFUモードに入れないといったトラブルの際に、ドライバ周りの問題を一発で修復してくれる「ImpulseRC Driver Fixer」というツールの名前で知っている、という方も多いでしょう。
しかし、FPV フリースタイルというジャンルの成り立ちを振り返ると、ImpulseRC の存在を抜きに語ることはできないと思います。
毎年のように新しい製品や技術が登場し、メーカーや販売店の入れ替わりも激しいFPVドローンの世界において、ImpulseRC は10年以上にわたり、フリースタイルフレームの「基準」とも言える存在であり続けました。
今回の運営停止は、後になって振り返ったときに、「FPV フリースタイルの一つの時代が静かに区切られた瞬間」として記憶される出来事になるのかもしれません。
ImpulseRC が発表したコメントの中では、2015年に発売したALIENが、10年後もなおスペアパーツを出荷し続ける存在になるとは想像していなかったこと、そしてその長寿はユーザー自身によって支えられてきたものだという言葉が綴られていました。
また、閉店直前まで大量のフレームとスペアパーツを小売店へ出荷しており、しばらくは各ショップを通じて製品が入手可能であること、さらに将来的な設計の継続サポートについても、外部との協議を続けていることが示されています。
単に「店を閉じる」のではなく、できる限りの整理と引き継ぎを行ったうえで、静かに幕を下ろそうとする姿勢が感じられます。
もちろん、今となっては高品質なフリースタイルフレームは数多く存在し、ImpulseRCの製品が手に入らなくなったからといって、FPV フリースタイルが成り立たなくなるわけではありません。
多くのユーザーにとっては、数あるメーカーの一つが役目を終えた、という受け止め方になるのも自然でしょう。
それでも、少なくともDAYSCAPE にとって、ImpulseRCは特別な存在でした。
なお、公式 Web ページの閉鎖に伴い、一時的に配布元が分かりにくくなっていた ImpulseRC Driver Fixer については、現在、ImpulseRCの公式GitHubリポジトリにて公開が続けられています。
https://github.com/ImpulseRC
メーカーとしての活動に一区切りがついた後であっても、これまで積み上げてきたツールや設計、知見をコミュニティに残そうとする姿勢は、ImpulseRCというブランドを象徴しているように感じます。
Section 2
「本物(オリジナル)」を探して

現在では、国内の代理店から購入するにしても、海外通販を利用するにしても、品質の高いフリースタイルフレームを比較的簡単に手に入れられるようになりました。
しかし、数年前の日本では状況が少し異なっていました。
当時の日本では、FPV フリースタイルそのものの認知度も低く、海外で評価されている「本物」と呼べるフレームやパーツに関する情報は限られていました。
個人輸入で入手できたとしても、言語やサポートの問題、継続的なパーツ供給といった点で、決して気軽な選択肢とは言えなかったのが実情です。
「FPV ドローンを、きちんと日本でも取り組める環境を作りたい」そんな素朴な思いから検討を重ね、2019年に DAYSCAPE(当時は DAYSCAPE Store)を立ち上げることになります。
すでにいくつものショップが存在しており、決して早い参入ではありませんでした。
加えて、FPV ドローンという分野自体もまだ小さく、需要が見えにくい状況でもありました。
それでも、創業初期という最も厳しい時期を乗り越えることができたのは、取り扱っていた製品そのものに、確かな競争力があったからだと思っています。
そしてその象徴的な存在、DAYSCAPEが始めてショップに並べた商品がImpulseRCのフレームでした。
ImpulseRCの製品は、単に海外で評価が高いというだけではなく、設計思想、耐久性、飛行性能、そして長期にわたるパーツ供給まで含めて、FPV フリースタイルに真剣に向き合って作られていることが、自然と伝わってくるものでした。
DAYSCAPEが最初に代理店契約を結ぶことができたメーカーがImpulseRCであったことは、非常に幸運な出来事だったと思います。
これまでのDAYSCAPE の歩みは、そのままImpulseRCと共にあったと言えます。
この記事を書くこと自体に、特別な意味があるとは思っていません。
ただ、これからの DAYSCAPE の歩みは、これまでとはまったく違ったものになっていくことも、また確かな事実です。
その区切りとして、今このタイミングで、ImpulseRC について書き残しておきたいと思いました。
Section 3
ALIEN - フリースタイルフレームの原点

ImpulseRC初期の代表作であり、フリースタイルフレームの基準を定義した存在。
それがALIENです。
もっとも、FPV フリースタイルという飛行スタイルが生まれる“最初の一歩”が、どこにあったのかを正確に断定するのは簡単ではありません。
少なくとも私自身は、その時代をリアルタイムで体験していたわけではなく、当時の正確な時系列や細かな空気感については、後追いで知った部分がほとんどです。
ただ、振り返ってみると、QAV210をはじめとするフレームが登場した頃から、目視飛行による空撮や、FPV レースとは明確に異なる目的、「FPV飛行そのものを表現として楽しむ」という方向性が、少しずつ形になり始めていたように思います。
QAV210などは、いわばその土台を作った存在。
H 型に近いシルエット、メインフレームとトッププレートによる二階建て構造、トップマウントバッテリー。
当時としては非常に合理的で、FPV ドローンの構成を一気に整理したフレームだったと言えるでしょう。
その流れの中で登場したALIENは、フリースタイル用途に特化してデザインされた、最初期のフレームと呼ぶにふさわしい存在だったように思います。
ALIEN が採用したのは、QAV210 のような H 型に近いシルエットではなく、対角のアームが一直線上に配置され、アームの根元が一点で交わり、上から見るとアームが潰れたX形状に見える、いわゆる Compressed X(コンプレスド X) と呼ばれるシルエットでした。
このシルエットは、機体の回転軸を明確にし、ロール・ピッチ方向のレスポンスを大きく向上させます。
結果として、素早いスナップ、連続したフリップやロールといった、初期のフリースタイル特有の動きを、より意図通りに引き出せるようになりました。
また、ALIEN は最初から「クラッシュすること」を前提とした設計がなされていました。
4 本のアームはそれぞれ独立しており、破損時には個別に交換が可能。
この構造が衝撃を分散させる構造であると同時に、修理やメンテナンスの利便性を飛躍的に高めた点も、当時としては大きな特徴だったはずです。
さらに、FC や ESC、VTX といった FPV パーツの規格が整備されつつあった時代背景を的確に捉え、各種エレクトロニクスを搭載しやすいよう、あらかじめ十分な取り付け穴がレイアウトされていました。
これらの特徴を一言でまとめるなら、ALIEN は「生まれつつあったFPV フリースタイル」に、真正面から向き合って設計されたフレームだった、ということなのだと思います。
DAYSCAPE 開業時点では、ALIENの登場からすでに数年が経過しており、別の多くのメーカーがその思想を取り入れたフレームをリリースしていました。
それでもなお、「フリースタイルフレームの原点」として ALIEN の名前が語られ続けているのは、単に早かったからではなく、その設計が極めて本質的だったからなのでしょう。
Section 4
「長く使えるフレーム」の価値

ALIENは、ボディ、アーム、スクリューパックという、3つのパーツで構成されたフレームです。
ボディとアームには複数のサイズバリエーションが用意されており、組み合わせ次第で用途や好みに応じた構成が可能。
初見ではどの組み合わせで買えば良いのか少し分かりづらい部分もあったのですが、「自由度がありながら、複雑になりすぎない」という絶妙なバランスこそが、ALIEN が長く支持され続けた理由だったのだと思います。
特筆すべきなのは、10年以上にわたって消耗パーツが供給され続けたという事実です。 多くのメーカーがモデルチェンジとともに旧モデルのサポートを終えていく中で、 ImpulseRC は「すでに持っているフレームを、これからも使い続けたい人」を置き去りにしませんでした。
フリースタイル飛行では、わずかな剛性や重量バランスの違いが、 飛行感覚に大きく影響します。
だからこそ、同じフレームを、同じ感覚のまま使い続けられるという価値は非常に大きなものでした。
また、FPV ドローンの世界では、搭載するパーツの小型化が急速に進み、それに合わせてフレームも最適化されていく流れがあります。
その結果、「まだ使える古いパーツが、新しいフレームには載らない」という状況が、少なからず発生してきましたが、ALIEN はそうした変化の中でも、旧来のパーツを無理なく受け入れられる余裕を持った設計でした。
さらに言えば、FPV ドローン用途として設計されていない電子部品を搭載したい場合でも、ALIEN は扱いやすいフレームであり、フリースタイルに限らず、別の用途や実験的な使い方にも応えてくれる。
その懐の深さもまた、「長く使える」という価値の一部だったと言えるでしょう。
ALIENは、使い手の環境や時間の流れに合わせて、静かに寄り添い続けることができるフレームだったのだと思います。
Section 5
MR.STEELE と ALIENが描いた時代
ALIENの使い手として、世界で最も広く知られている存在がMR.STEELEでしょう。
彼に触れずにImpulseRC ALIENを語ることは、やはり難しいと思います。
“King of FPV Freestyle”と呼ばれたMR.STEELEのフライトは、言葉で説明するよりも、実際にYouTubeをご覧いただいた方が分かりやすいかもしれません。
無理やり言葉にするならば、強烈なスナップ、思い切りの良いフリップやフルスロットル、そして極めて精度の高いオービットやライン取りを、自然に織り交ぜた飛行でした。
多くの場合、バッテリー1パックのフライトをノーカットで構成されるMR.STEELEの映像は、アイディアと遊び心に満ちていながら、決して偶然に任せたものではなく、明確な意図とコントロールの上に成り立っていました。
奇声を上げながらフルスロットルで突っ込んでいく姿や、クラッシュした機体を探しにいく様子まで含めて、ビデオ全体を一つのエンターテイメントとして成立させたのが、MR.STEELE でした。
FPVフリースタイルを「表現として成立する飛行」へと押し広げた存在だったと言えるでしょう。
そして重要なのは、そのフライトが ALIEN というフレームで行われていたという事実です。
あの時代の MR.STEELE に、多くのパイロットが追いつけていなかった以上、ALIEN が「古い」「性能が足りない」と言われる理由はなかった。
この点こそが、非常に重要だったのだと思います。
ALIEN は、パイロットの表現を制限するフレームではありませんでした。
使い手が成長すれば、その成長にそのまま応えてくれる。
主張しすぎず、しかし確実に支える。
その姿勢は、ImpulseRC の思想そのものだったように感じます。
私自身、初めて見て強い衝撃を受けたFPVフリースタイルの映像もMR.STEELEのものでしたし、初めて組んだフリースタイル機もALIENでした。
MR.STEELE は、自身のセッティングやパーツ構成を包み隠さずコミュニティに共有しており、誰もがそれを参考にできる環境が整っていました。
彼が紹介していた構成をそのまま参考にし、YouTube の動画を何度も見返しながら、一つひとつ確認するように組み立てていったこと。
そこから少しずつ自分の好みを加え、試行錯誤を重ねていったことを、今でもよく覚えています。
DAYSCAPE に掲載されている最初のブログ記事も、このALIEN の MR.STEELEバンドルを組み立てた内容でした。
才能あるパイロットの挑戦、完成度が高く、しかし使い手を縛らないフレーム、そしてパーツやファームウェアの進化。
それらが相互に作用し、大きなうねりとなって、FPV フリースタイルという表現は一気に押し広げられていきました。
ALIEN には、そんな時代の空気が刻み込まれているように感じます。
Section 6
REVERB - フリースタイルの多様性

ALIEN の成功を引き継ぎつつ、後に登場するAPEXへとつながっていく存在。
それがREVERBです。
REVERBは、MR.STEELEではなく、Charpu(チャープ)のフィードバックが設計に強く反映されたフレームとして知られています。
Charpu は滑らかで一定のテンポを保ち、機体の「向き」や「重心」を丁寧に扱う飛行スタイルを好むパイロットであり、REVERBはこうした飛行哲学を体現したフレームでした。
REVERB の特徴としてまず挙げられるのは、Compressed X系の特性を維持しながらも、ALIEN よりTrue Xに近いシルエットを採用している点です。
Compressed X の利点であるバランスの良さを残しつつ、True Xの安定感を取り込むことで、滑らかで安定したライン飛行と操作性のバランスが向上していました。
また、REVERB のフレーム構造には、前後を分割したメインフレームに 4 本のアームを挟み込む形状が採用されています。
FPV フリースタイルでは前方からの衝撃が多く、壊れやすいのも常ですが、この前後メインフレーム分割とアーム個別設計は、耐久性とメンテナンス性の両面で大きな進化でした。
このような設計は、後のAPEXにも明確に引き継がれています。
当時のフリースタイルシーンには、攻撃的でダイナミックなフライトによって表現の限界を押し広げるパイロットがいる一方で、スムーズなライン維持や精緻なコントロール、飛行そのものの美しさを重視するパイロットも確かに存在していました。
REVERBは、まさに後者の価値観に正面から応えるためのフレームだったと言えるでしょう。
結果としてREVERBは、ALIENのようにシーンを象徴するアイコンにはならなかったかもしれません。
しかしそれは決して優劣の問題ではなく、フリースタイルという分野の中に多様なスタイルが模索されていたことを示す、ひとつの証でもありました。
また当時は、多くの人気パイロットが自らブランドを立ち上げたり、メーカーとタッグを組んでフレームをリリースしたりと、シーン全体が表現の可能性を押し広げようという勢いに満ちていた時期でもあります。
その中で数多くの銘機が生まれ、それぞれが異なる思想や飛ばし方を提示していました。
ImpulseRCのフレームが、特定のスターやスタイルに強く依存することなく、多くのパイロットが「自分の飛ばし方」を自然に投影できる土台として成熟していった背景には、こうした多様性への深い理解と、それを形に落とし込む一貫した設計思想があったのだと思います。
REVERBは、ALIENからAPEXへと至る技術的な橋渡しであると同時に、フリースタイルの多様性と可能性を模索していた時代そのものを体現したフレームでもありました。
Section 7
Micro ALIEN / Micro REVERB - U199の挑戦

弊社がImpulseRCとの取引を開始して間もなく、Micro ALIEN が登場しました。
当時の日本では、機体重量200g未満は模型航空機として扱われ、航空法の規制対象外とされていました。
そのため、RunCam Split Mini 2 に代表されるような、HD記録とFPVを一体化したカメラを用い、「200g未満でどこまで実用的な空撮ができるのか」という試行錯誤が、国内のFPVパイロットの間で盛んに行われていました。
そうした流れの中で、199g以下で構成可能なMicro ALIENは登場と同時に大きな注目を集め、瞬く間に人気モデルとなります。
当時は小型軽量なエレクトロニクスが次々と登場していた時期でもありましたが、その多くは耐久性に課題を抱えていました。
軽量化のために徹底的に重量を削ぎ落とした構成では、クラッシュ時に機材を十分に保護することも難しく、トラブルは決して珍しいものではありませんでした。
軽量化と性能、そして信頼性、この三つのバランスを探る作業は決して容易ではありませんでしたが、「自作する以外に選択肢がなかった」からこそ、日本のFPVシーンは非常に熱量を帯びていたとも言えるでしょう。
Micro ALIENは、ALIENの思想と構造をそのままスケールダウンした、いわばALIENのミニチュア版です。
剛性の取り方やレイアウトを踏襲したまま小型化されたフレームは非常に完成度が高く、マイクロクラスでありながらも高い飛行性能を実現していました。
そのため単なる空撮用途に留まらず、マイクロ空撮機にFPVフリースタイルの要素を持ち込む可能性を秘めた存在として、多くのパイロットの関心を集めていたように思います。

そして、この流れをさらに加速させたのが Micro REVERBの登場でした。
当時のマイクロドローン空撮は、常にパワーに対して重量が限界ギリギリという世界でした。
そのため、ALIENのようにとことんスナッピーで切れ味鋭い、純粋なフリースタイル寄りのシルエットだけでなく、ラインを維持しやすく、安定した飛行が可能なMicro REVERB もまた、非常に高い人気を誇りました。
2022年の航空法改正で、基準が200g未満から100g未満へと変更されるまでの間、日本独自とも言えるマイクロドローン空撮のブームが、確かに存在していたように思います。
Micro ALIEN と Micro REVERB は、そうした時代背景の中で、確かな品質と使いやすさを備えつつ、「マイクロ空撮にフリースタイルの思想を持ち込めるのではないか」という強い期待感を、多くのパイロットに抱かせるフレームでした。
Section 8
APEX - 一つの到達点

2019年末、ImpulseRC の集大成とも言える APEX が登場します。
MR.STEELE が深く関わったこのフレームは、それまでのALIEN、REVERBで培われてきた思想や経験をすべて統合し、現代のフリースタイルフレームのスタンダードとも言える完成形を提示しました。
- 5.5mm 厚の高剛性アーム
- ARM KEY の追加によるメンテナンス性の向上
- 30×30 / 20×20 両対応の高い拡張性
- 6S 時代の高出力にも耐えうるフレーム剛性
APEXは、性能・耐久性・メンテナンス性のすべてを高次元で満たし、フリースタイルフレームとして大きな成功を収めます。
APEX 発売当時、世界中のFPV コミュニティはまさに熱狂の渦中にありました。
メーカー在庫は瞬く間に枯渇し、代理店としては安定した在庫を確保することが非常に難しい状況が続きました。
しかし今振り返ると、あの時期はFPVフリースタイルというカルチャーが一つのピークを迎えていた瞬間だったように思います。
単なる製品のヒットではなく、シーン全体が持つエネルギーが、APEXに集約されていた様な、そんな印象です。
その後APEXは、アームサイズのバリエーション展開を行いながら進化を続けていきます。
また、HD FPV システムの普及に対応するため、ボディ構成を見直したAPEX HD、APEX EVO へとマイナーチェンジが重ねられました。
並行して、撮影用途に特化したデッドキャットシルエットを採用したAPEX DC、APEX LR が登場し、さらにMicro APEXもラインナップに加わります。
多くの派生モデルが存在する中でも、APEXはこの変化の激しいFPV フリースタイル業界において、実に8年近く第一線で使われ続けてきたフレームだと言えるでしょう。
それは、単に完成度が高かったからではなく、時代の変化を受け止めながらも、軸となる思想が揺るがなかったからこそ成し得た結果だったのだと思います。
Section 9
ImpulseRCと過ごした時代

ここまで、個人的に特に思い入れのあるフレームを中心に、ImpulseRCとの歩みを振り返ってきました。
ImpulseRCのフレームは、単体で完結する製品というよりも、当時のFPVフリースタイルシーンそのものと強く結びついた存在だったように思います。
数多くのメーカーやパイロットたちが、それぞれのスタイルや価値観を持ち寄り、互いに影響し合いながら、シーン全体を押し広げていった時代でした。
ImpulseRCは、その最前線で試行錯誤を重ね、得られた成果や思想をコミュニティと共有し続けてきた存在でした。
FPVフリースタイルの文化全体を見渡すと、その節々にImpulseRCの面影を感じてしまうほど、強い存在感を放っていたプレイヤーだったのだと思います。
DAYSCAPEがECサイトを始めてからの7年間、日本国内ではドローンを取り巻くルールが急速に整備され、世界的には新型コロナウイルスの影響も重なりました。
決して穏やかな時代だったとは言えません。
それでもFPVフリースタイルのシーンは止まることなく、技術も表現も進化を続け、私たちはその過程を目の当たりにしてきました。
ImpulseRCがその最前線にあり続けたこと、そしてDAYSCAPEがその一端を日本で担わせてもらえたことは、私たちにとって掛け替えのない経験です。
もしあの出会いがなければ、DAYSCAPEというショップは存在していなかったでしょう。
日本国内では航空法改正により無人航空機の機体登録が必要となり、100g以上の機体の運用ハードルが上がりました。
100g未満で組める機体をラインナップしていないImpulseRCの製品は、ここ数年、日本市場において決して売れ筋とは言い難い状況が続いています。
そういった意味では、私たちがImpulseRCに十分な貢献ができていたとは、言い切れない部分もあるかもしれません。
それでも、全く無名で、実績もなかったDAYSCAPEを温かく迎え入れ、ここまで引き上げてくれたのがImpulseRCでした。
このことに対する感謝は、どれだけ言葉を重ねても尽きることはありません。
今後どうなるかは分かりませんが、ImpulseRCがパイロットの挑戦のために生み出してきたフレームの在庫が補充されることは、もうないのかもしれません。
それでも、今手元にあるImpulseRCのフレームは、これからも大切に使い続けていくつもりです。
フリースタイルフレームである以上、飛ばしてこそ意味があり、ImpulseRCが人々の記憶に残り続けるとすれば、それはきっとフライト映像とともにあるはずです。
市場も、ルールも、技術の前提も、どんどん変わっていきます。
それでも、限られた条件の中で工夫し、構成を考え、組み立て、飛ばし、表現しようとするパイロットの姿勢は、これからも変わらずFPVフリースタイルの核心であり続けるのだと思います。
製品を通して、そうした姿勢そのものを教えてくれたImpulseRCに、心からの感謝を込めて。
本当に、ありがとうございました。



