トリックシリーズの第4回目。
前回のマーティフリップから、なんと1年以上空いてしまいました。
1年以上首を長くして待っているような方がいるかは不明ですが、地道に作って行けたらと考えています。
このトリックシリーズは似た系統のトリックで初歩的なものから、ある程度難易度の高いものまでを1本で説明してしまうという、ちょっと欲張りな企画。
将来的に、このシリーズだけ見ておけばFPVフリースタイルのトリックは一通り網羅できるくらいにまとまった情報になったらいいなと思っているのですが、道のりはまだまだ遠いですね。
フィールドの都合でなかなかできないものも、もちろんあるのですが、なるべく検討しますので、もし次回紹介して欲しいトリックがあったら動画にコメントしていただけたらと思います。
動画 34秒~
ORBITS/オービット
FPVフリースタイルを代表するトリックの1つで、非常に見栄えのするトリックです。
あまりにも有名で、国内でもHow toビデオがたくさん作られています。
是非他の方のHow toビデオもご覧いただけたら面白いと思います。
オービットは背面状態にならないので墜落のリスクが低く、初心者でも怖さを感じる事なく挑戦できるのも、魅力の1つですね。
アクロモードでの飛行がある程度できるようになったら、すぐにでもトライできるトリック。
初心者の方にとってはFPV FREESTYLE TRICKS 01のロール・フリップ、フォワード・フリップ、バック・フリップよりも安心してチャレンジできるのではないかと思います。
比較的敷居の低いトリックではあるものの、正確さや被写体からの距離や高さ、回転速度を自由自在にコントロールするのは意外に難しく、奥の深いトリックでもあります。
How to ORBITS
オービットのやり方を簡単に説明すると、スロットル・ロール・ピッチ・ヨーの4軸のバランスをとって、一定の高度のまま被写体を画面中央に捉えたまま、被写体の周りをぐるぐる回る、というものです。
オービットのイメージを図にしてみました。
今では日本中にあるドローンスクールなどで、試験の種目として採用されている「ノーズ・イン・サークル」と呼ばれるものと動き自体はほとんど同じものです。
ただ、レベルモードではなくアクロモードで行うので、スティックのバランスであったり、映像的な見え方はかなり変わってきます
なかなかオービットっぽくならない?
なんとなくイメージだけでとっかかりを掴める方も多いと思うのですが、なかなかオービットっぽくならない方は、対象物の周りをぐるぐる旋回するところからはじめます。
回転の半径をある程度維持したまま、安定して旋回できるようになったところで、ヨーの入力を徐々に大きくしていき、バランスを取るようにすると、感触を掴みやすいです。
初めは自分の回りやすい距離と速度からはじめて、左右回転ともある程度うまくできるようになったら、被写体からの距離や速度を変えて練習してみましょう。
被写体からある程度距離をとって回るのか、近くを回るのか、早く回るのか、遅く回るのかなど、回り方でステック入力のバランスは大きく変わります。
セッティングなど
このセッティングでしかできない、という事はあまりなく、一般的な機体であればトライできるトリックです。
フレームのX形状(True XやCompressed Xなど)の具合で、ステック入力のバランスが変わります。
注意点
安心してトライできるオービットですが、練習する上で是非気にして頂きたいのはバッテリーです。
回転する速度によっては水平線に対してかなり機体が傾くため、高度を維持するためにより電力を消費し、さらに長時間継続できるトリックですので、夢中で練習していると、あっという間にバッテリーを使いすぎてしまいます。
バッテリーを破損しないよう、OSDの電圧表示をいつも以上に確認し、はじめのうちは早めに機体を戻してバッテリーチェッカーで消費量を確認して、飛行可能時間を把握しましょう。
動画 2分 57秒~
REWIND ORBITS/リワインド・オービット
リワインド・オービットは非常にマイナーなトリックなのですが、是非紹介したいと前々から考えていたトリックです。
非常に低速で回ると普通のオービットとほとんど差が出ない事もあってか、このトリックをオービットと区別しない場合もあります。
将来的に有名になったら別の名前で呼ばれる事になるかも知れませんね。
How to REWIND ORBITS
上記の図はイメージで、実際の角度に正確ではないと思うのですが、被写体と機体の関係は上記図のような感じをイメージしていただけたら理解しやすいのではないかと思います。
オービットが前方回転方向側のアームの側に動くイメージなのに対し、リワインド・オービットは後方の回転方向のアーム側に動いていく意識で操作します。
上記の図ではカメラが被写体の方向を向いていないと言う点に気づいた方も多いのではないかと思うのですが、これは上記図の機体写真がロール回転を表現できていない為です。
角度を付けてFPVカメラと記録カメラを搭載している場合、もともとフレームの面とFPV映像の方向は一致していません。
ロール軸に機体が傾くと、その角度のズレが水平に対して左右方向にも影響を及ぼす為、フレームの機首で真っ直ぐ被写体を捉えていなくても、FPV画面上では被写体を中央に捉える、という事が可能になります。
その為、カメラの取り付け角度があまりにも小さいと、オービットとほとんど違いがないトリックになってしまいます。
やり方はオービットの各軸のバランスが変わるだけなのですが、機体をロールで傾けてバックしていくイメージで操作すると良いです。
リワインド・オービットの面白さ
動画でも紹介していますが、オービットの途中でリワインド・オービットに移行する事で次の動作の選択肢が非常に多くなるので、流れの中でより自然にオービットを活用できるようになります。
また、個人的には見慣れた通常のオービットから途中で崩してリワインド・オービットにしたり、もしくはその逆にしたりする事で、ちょっと違った、おしゃれな感じがあるように思っています。
動画 6分 25秒〜
Trippy Spin/ Cyclones/Inverted Orbit /トリッピースピン
今回の動画のタイトルにもなっているのがトリッピースピン。
サイクロン、もしくはインバーテッド・オービットとも呼ばれ、親しまれているトリックです。
以前は開けたフィールドにポツンと高い塔があるような環境でトリッピースピンを行っている動画が多かったですが、最近はさまざまな障害物のある環境で自然にフローに取り入れている例も多く見られるようになりました。
はじめてトリッピースピンを見ると、なんで浮力が維持できるのか不思議に思うかも知れませんが、水平線に対して機体が背面状態になっている訳ではなく、垂直に立っている対象物に対して画面上で背面状態になっている、というのがポイントです。
FPVフリースタイルのFPVカメラや、記録に使用されるGoproなどのカメラは、一般に広いFOVを持っていて、さらに、それらが+方向に何度かの角度を持って取り付けられています。
そういった構成の機体が、テール・イン・サークル的な回転を行う際に、機首側が持ち上がる事で、記録カメラの上側の画角に対象物を捉えられる、という、言葉にするとなんだか複雑な仕組みのトリックです。
How to Trippy Spin
機体の動きとしては「テール・イン・サークル」と呼ばれる種目に近いです。
機尾側を対象物に向け、対象物を周回します。
スティック操作としては、オービットやリワインド・オービットとは違い、ロールとヨーをクロス・コーディネート気味に操作します。
高度の調整をスロットルで行うと、高度が上がり気味になり、さらに落としたい時に素早く落とせないので、スロットルよりもむしろピッチのコントロールで高度の調整を行うと良いです。
水平線に対して機体を寝かせる事で浮力を増し、機体を立てる事で浮力を落とすと言った具合で高度を調整する事ができます。
スロットルは回転の速度や回転の大きさとバランスを取る意識で、なるべく安定的に入力すると良いです。
対象物周辺に障害物が多い場合は大きく回る事ができないので、回転をコンパクトに抑える必要があります。
また、対象物がそんなに高くない場合、高度が不安定になると、すぐに地面や高い位置の障害物に当たってしまう為、環境によってはトリックの初めのほんのわずかな時間内に全ての軸である程度バランスの取れた操作を行わないと即クラッシュしてしまいます。
とっかかりを掴むまでは、辛抱強く取り組む必要があるかも知れません。
なかなかうまく行かない場合は、実機で試し、そのイメージを持ち帰ってシミュレーターで練習し、また実機で試す、という、結構一般的なプロセスですが、とにかく回数取り組む事が成功への近道かと思います。
シミュレーターのような理想的な環境でなんとなく周り続ける事自体には、そんなに練習効果が見込めないと思うのですが、トリックの初めの回転のかけ方の精度と、回転中のピッチでの高度コントロールに着目して練習し、さらに回転の大きさをしっかり意識して取り組むと実機でも生きてくるはずです。
セッティングなど
当然、FPVカメラや記録カメラの取り付け角度が大きい方が、水平線に対して機首を持ち上げる角度が浅くても背後にある対象物を画角に捉える事ができるので、少ないスロットルでこのトリックを行う事ができます。
ただし、対象物の高さと周辺の開け具合が充分にある、など、カメラの角度だけではない要素のバランスが取れれば、このトリックは可能になります。
今回はFPVカメラと記録カメラを30度の角度に取り付けた機体で動画を撮影しました。
また、どうしても回転の半径が大きくなってしまう、回転の半径を小さくしようとすると回転がすごく速くなってしまう場合、モーターの回転数やプロペラを見直してみると、一気にやりやすくなるかも知れません。
個人的には例えばT-motorのプロペラの場合、T5143よりもT4943の方が小回りが効いて回転の半径を小さくしやすい、と感じました。
その他のセッティングにもよりますが、色々試してみると面白いと思います。
4セルの機体の方がやりやすい?
実際に今回の映像の撮影で使用した機体は全て4S構成の機体です。
4Sの方が低スロットル域での微調整が効くので、初めは4Sの方がやりやすいかも知れません。
さらに、3インチや2.5インチなどのマイクロ機を使うと、空間が広く感じるので、そういったアプローチもおすすめです。
最終的には6Sの機体でも特に問題なく出来るようになったので、技術が伴えばさまざまな構成で実行可能なトリックだと思います。
<出典>
Rotor Riot
Orbits with Mr Steele - Trick Series
https://www.youtube.com/watch?v=-7xgB99JLJo
Cruis3z FPV
FPV | Proximity Fun & Rewind Orbits? | Practice Session | 𝙁𝙧𝙚𝙚𝙨𝙩𝙮𝙡𝙚 ᵃᵘˢ (Music by: Golden Features)
https://www.youtube.com/watch?v=9NFclxtL2r4
Rotor Riot
Trippy Spins/Cyclones with Drew and Kevin - Trick Series
https://www.youtube.com/watch?v=KETbwKr2_ec&t=2s
Bubby FPV
How To Trippy Spin
https://www.youtube.com/watch?v=wqRQVpjtiZQ
はじめてのトリックに挑戦する際は、シミュレーターで操作のタイミングや見える景色などイメージを作ってから実機でトライするのがオススメです。