Pixhawkでの機体製作【2】使用パーツ

DIYドローンを構成するパーツ

今回は伝統的なスタイルのDIYドローンを構築するので、これまであまり触れてこなかった各パーツの基本的な役割も軽く補足しながら、今回使用するパーツを紹介していきたいと思います。

フライトコントローラーとは

PIXHAWK4MINI

フライトコントローラーとは、機体の姿勢や速度、場合によっては位置情報などセンサーが取得した情報と、操縦者などからの命令などを集約・処理し、機体を制御する為の信号を出力する機能を担う事から、ドローンの頭脳とよく言われます。

大雑把にいえばその理解であっていると思うのですが、現在フライトコントローラーとして製品化されているものは、機体を自作する用途で使いやすいように様々なセンサーも内蔵しているものが多いので、「脳」単体で製品となっているものは逆に珍しい、という言い方も出来るかも知れません。

IMU (Inertial Measurement Unit = 慣性計測装置) はフライトコントローラーのメインとなるセンサーなので多くの製品で標準的に内蔵されていて、あとは気圧高度計が内蔵されている製品が多く、製品によっては信頼性の向上の為に、そのいくつかが2個ずつ入っているものもあります。

PX4やArdupilotを実行する為のフライトコントローラーには、その本体にコンパス(方位磁石)が内蔵されているものも多いです。

人間でも、目や鼻や耳など、機能としてユニークなセンサーがかなりの種類大体頭部に集中しているので、それらの一部も含んだニュアンスで「頭脳」と捉えると、「ドローンの頭脳」という言い方でかなり正確かも知れません。

飛行するものに必ずフライトコントローラーが必要かと言うと全然そうではなく、例えば従来の固定翼であったりシングルローターのラジコンは、受信機から直接サーボをコントロールする機構のものが基本だったりするようなので、フライトコントローラーがなくても地上の人間の頭脳で処理した結果が伝達できれば飛行自体は可能です。

ただ、マルチコプタータイプの場合、複数のモーターの回転量をフライトコントローラーが様々な情報を処理した結果でコントロールしています。

フライトコントローラーなしでモーター1を何%、2を何%、3を、4を・・・、という形で人間がプロポから信号を送り、直接ESC→モーターを動かして飛行を達成することは、ちょっと想像を絶する難易度になると思いますので、マルチコプタータイプの場合はフライトコントローラーが搭載されるのが基本と考えて良いと思います。

今回使用するフライトコントローラー

「Pixhawkを使用した」と言っている時点でフライトコントローラーはPixhawkシリーズの何かになってしまうのですが、今回使用したいフライトコントローラーは「Holybro Pixhawk4 mini」です。

このHolybro Pixhawk4 miniは小型で配線もしやすく、値段も比較的手頃である事から、Pixhawkを試す上で最適だったのですが、現在ではメーカーで製造されておらず入手する事が難しい商品となってしまいました。

公式に生産終了がアナウンスされた訳ではないので、将来的に復刻する可能性がない訳ではありませんが、既に5X、6Xや6Cと、次々に新しいモデルが登場している為、あまり期待できないかも知れません。

実は機体自体は随分前に完成しており、記事を書くまでにかなり時間が経ってしまっているので、古いフライトコントローラーを使用した例となってしまいました。

PX4やArdupilotを実行できるフライトコントローラーはいくつかのメーカーから発売されていますが、Holybroの製品は企業の研究開発・試作などの用途以外にも、個人の趣味として使用するユーザーもちゃんと考慮した価格帯に設定されていると考えられます。

Holybroのこの手のフライトコントローラーは、ここ最近は定期的にメーカー在庫が完全になくなってしまうほど生産に対しての需要が高く、関連して製品の更新頻度が高くなっているようです。

そういった事情もあり既に入手困難なアイテムですが、一旦Holybro Pixhawk4 miniでの組み立てを紹介し、後ほど最新のHolybro Pixhawk 6Xに置き換える作業を別の記事で紹介できたらと考えています。

このHolybro Pixhawk4 miniにはいくつかバージョンやパッケージが存在しており、まず本体FCのケースがアルミニウムかプラスチックかで2種類のバージョンがありました。

その他に、付属品のパッケージ内容がいくつかあったのですが、今回使用するのは以前当店で販売していたHolybro Pixhawk4 mini (アルミケース) & GPS (UBLOX NEO-M8N) & PM06 V2というパッケージ。

このセットにはFC本体の他にGPSセンサーとスタンド、PM06 V2 (電流系+PDB)、あとはケーブル類が含まれており、作りたい機体に対してPDBのサイズやアウトプットの数がマッチしていれば非常に便利なセットになっています。

Holybro X500 フレームキット 

X500

ドローンの場合フレームによって機体のサイズが決まり、取り付け穴の形状などからハードウェアも制約を受けます。

フレームの選択が全体に及ぼす影響はかなり大きいので、目的に対して最適なものを選ぶ必要があります。

逆に、オリジナルのフレームを考案して飛行させるなど、フレーム自体が企画自体の目的にもなる場合もあるかも知れません。

今回フレームとして使用するのはHolybro X500です。

現在はこちらもバージョンアップしたHolybro X500 V2がリリースされており、基本構造はそこまで変わっていませんが、多くの改善が施されているようです。

既にV2がリリースされていて古いフレームである事と、Holybroのフレームは組み立て説明書がしっかりしていますので、今回はフレームについてあまり細かく説明せずに進めてしまいたいと考えています。

このHolybro X500はプロペラサイズで言うと、10インチプロペラに適合するフレームとなります。

このサイズはDJIのF450という随分昔のDIYフレームと同じサイズであり、その後DJIとしてはPhantomシリーズでもこのサイズが踏襲されています。

自作ドローンとしては伝統的なサイズと言えますので、情報や適合するパーツも調べやすく、エントリー機としては都合が良いと言えるでしょう。

HolybroからはS500と言うフレームもリリースされており、X500よりもS500の方がDJI F450に構造が近いのですが、X500の方がデッキスペースが広く、ペイロードを色々試せそうなので今回はX500を選びました。

モーター・ESC・プロペラ

AIRGEAR450

ご想像の通り、モーターがプロペラを回すことでドローンは推力を得る事ができます。

わかりやすいところで言うとモーターはサイズと回転数、プロペラはサイズとピッチ角で大きく仕様が決定されます。

初めて作るサイズの機体の場合、似たサイズ・重量の機体を作成している人が使用しているモーターやプロペラの仕様を調べると非常に参考になります。

レースやフリースタイル用のドローンであれば、様々なメーカーから沢山のモーターとプロペラがリリースされていますので、ユーザーそれぞれ自分の使用しているモデルにはかなりこだわりがあるもので、モーターは単にサイズと回転数だけでなく、効率であったり、重量であったり、耐久性であったり、スムーズさであったり、出力の曲線であったり、同じサイズと回転数でもモデルによって違いがあります。

プロペラに関して言えば今ではかなり複雑なブレードの形状のものもありますし、自分の飛行スタイルにあったものが見つかるとちょっと他のものは使いたく無いという位、モデルによってフィーリングがかなり異なってくるものです。

ESC(Electronic Speed Controller)はフライトコントローラーや受信機からモーター回転の指示を受け取り、実際にモーターを制御する役割を担います。

ESCの主な仕様としては、受けられる信号の種類や出力周波数、瞬間・連続最大電流などがあり、大体どのモデルも連続最大電流が名前の中に入っているのですが、これが選ぶ上で一つの目安になります。

では何Aのモデルを選べば良いかと言う話なのですが、モーターのスペックシートから最大回転時の電流を調べ、それに対応するESCを探すと機体に対して非常に大きなものになってしまったり、オーバースペックになってしまう場合もありますので、その機体の使用用途によって考え方は大きく異なって来ます。

はじめのうちは、やはりインターネットで似たサイズ、用途の機体を作成している方の構成を参考とするのが良いと思います。

今回使用するモーター・ESC・プロペラはT-motorのAIR GEAR 450。

AIR GEAR 450は 2216サイズ 880KVのモーターと20AのESC、あとはT1045と言うモデルのプロペラがセットになったものです。

こちらは10インチサイズのドローンのセットアップとして非常に重宝するものだったのですが、モデルとしては古いもので、現在では手に入りづらい商品となっています。

AIRGEAR450-2

このAIR GEAR 450のセットの中で、モーターとプロペラは今でもほぼ同じものが手に入るお決まりのものなのですが、ESCだけはPWMでモーターを制御する古いタイプのものです。

現在ではDshotプロトコルにより、より高速通信が可能なESCがマルチコプターでは主流であるため、なぜわざわざこんなに古いものをと思われるかも知れません。

しかし、PX4もArdupilotも基本的な部分のドキュメントはPWMのESCが主流だった時代に書かれたものなので、これからPX4やArdupilotに挑戦する場合、理解しやすいと言う点では悪くない選択となります。

現在では当店でも開発機向けにDshotプロトコルのESC (Holybro X500 V2 Kit BLHeli-S 20A ESC) に置き換えて販売しています。

PWMのESCとDshotのESCとでは設定方法が一部変わってきますので注意が必要です

現在このAIR GEAR 450のモーターに代わるものとして、当店ではHolybro X500 V2 Motor 2216 920KVを取り扱っており、回転数が若干増えていますが標準的な構成のX500やS500に問題なく使用できます。

プロポ・受信機

MK15E

これまで紹介してきた内容で機体側はほとんど組み上がってしまい、後は一般的なプロポと受信機があればほぼ完成なのですが、今回せっかくPixhawkで機体を製作するので、MAVLinkも試してみたいと考えています。

日本では地上側のコントローラー部分をプロポとか送信機と呼ぶのが一般的ですが、このコントローラー型のデバイスの中に無線を発信する送信機が組み込まれている、もしくは外付けするタイプがほとんどです。

プロポとはProportional Control SystemもしくはProportional Systemの意味で、ざっくり言うと操作量に比例してサーボなどを制御するシステムのことを指すそうで、プロポのスティック形状のコントロール部がまさにその為の機構と言うわけですね。

海外ではプロポのことをTransmitter(トランスミッター)とか、Radio(ラジオ)とか呼ぶ場合もあるようで、これは日本人がこのデバイスのことを送信機とも呼ぶ感覚に近いかも知れません。

ドローンで使用される無線通信の種類

TX-RX

一般的にドローンに使用される無線の種類と全体感を把握していないと混乱しますので、図にしてみました。

① RC

機体と地上との無線通信の種類は機体構成によって様々なのですが、一番シンプルなもので①のRC (コントロール) のみでもちゃんと飛行する機体を作る事ができます。

これはプロポのスティック操作やスイッチ操作を機体に無線で伝える為の信号です。

RCとはそもそもRadio Controlの略(ラジコン)なので、まさにこのコントロールの役割を担う無線通信ですね。

ごく少数ですが、③のテレメトリー経由で機体を制御し、RCシステムを搭載していないドローンもあり、PX4やArdupilotでも技術的には可能なのですが、何かあったときに即座に手動介入できないのはかなり危ないので、今でもRCシステムを搭載した機体が主流です。

この部分は日本では2.4GHz帯を使用し技適認証を受けた、特別な免許なしで利用可能な製品を使用するケースが多いですが、産業用の製品で920MHz帯を使用する(陸上特殊無線技士免許と開局が必要、この場合も基本的には製品自体にも技適マークが必要)ものなども最近では登場しています。

この①のRC信号はプロポから機体へ、一方通行の指示になります。

② ビデオプレビュー

もし、目視ではなくFPVで機体を操作したいとか、搭載したカメラの画角を確認したいと言った目的があれば、次に必要なのは②のビデオ信号ですね。

FPV(First Person View=一人称視点)のプレビュー映像もこれに含まれるのですが、ジンバル操作で撮影用カメラをコントロールし、その画角を確認するタイプのものもこれに含まれるので、とりあえずビデオプレビューと表記しました。

このビデオは基本的には機体から地上(操縦者)へ、RCとは逆の一方通行になります。

電波は目では見えませんので、当然、操縦者周辺にはその信号を受信する受信機と、受信した信号を出力するモニターやゴーグルが必要ですが、そう言ったデバイスを通して機体から撮影された映像を地上で確認する事ができます。

レースやフリースタイル用のFPVドローンでは、ギリギリの操作を可能にする為にほぼ無遅延の5.7GHz〜5.8GHzの周波数帯が使用されるのが一般的です。

こう言った電波を日本で使用する為にはアマチュア無線技師免許であったり、業務使用する場合は(業務使用可能な特別な無線機のみ利用可能)陸上特殊無線技士免許を取得して、使用する無線機を開局する必要があるというのは、今では結構よく知られている話かと思います。

一方、産業機では多少遅延があるものの、2.4GHz帯で機体からHDの映像を送信し地上側でプレビューする形がDJIのLightbridgeの時代から割と一般的です。

2.4GHzのシステムの場合、技適マークが付いていて特別な免許なしで使用可能、というものも存在します。

③ テレメトリー

最後に3つ目の通信としてテレメトリーがあるのですが、テレメトリーと言っても機体から一方通行のものや、双方向通信が可能なものまで様々です。

役割としては、機体側に搭載された電圧や電流、高度センサーの情報を送信し地上で確認できるようにするシンプルなものから、プロポ側で作成した自動航行ミッションを機体側に転送し実行するなど複雑なものまで、いろいろなものがあります。

MAVLinkとはドローンと通信するためのプロトコルなのですが、PX4やArdupilotはテレメトリーの送受信無線機を介してMAVLinkを受けたり送ったりして色々できるのが大きなセールスポイントです。

もちろん今回はMAVLinkを使用したいので相互通信が必要なのですが、日本で使用できて、この役割を担える無線機が、実はなかなかありません。

海外ではMAVLinkのシステムを構築する無線として915Mhzまたは433Mhzを利用した製品が比較的手頃な価格で普及しているようなのですが、電波法の取り決めにより日本でこれらの製品を利用する事は、残念ながらできません。

産業用として日本で使用可能なものも古くからほんの僅かにあったようなのですが、機能から考えると大型で、価格も高く、なかなか良い製品がない時期もありました。

そんな電波の悩みを解決してくれるのが、今回使用するSIYI MK15Eと言う製品で、このプロポセットだけでRC・ビデオ・テレメトリーの3つの通信を利用する事ができます。

このMK15「E」というのは日本技適取得モデルで、送信機にも受信機にも技適マークがついています。

使用する上で特に免許を取得する必要はありません。

MK15E

SIYIからはMK15Eとは別にMK15という別の国で利用する為のモデルもリリースされているのですが、MK15は当然日本用の仕様になっていませんので使用する事ができません。

日本向けの製品が少ないこの市場で、ちゃんと日本用の製品をリリースしてくれているのは非常にありがたいと言えます。

プロポはAndroidタブレットと一体型になっていて、専用のアプリを通してFPV映像をプレビューしたり(2.4GHzなのでそれなりに遅延があります)、QGCから自動航行ミッションの実行も可能。

現在入手可能で日本で使用可能なこの手の製品は、このMK15Eだけではないのですが、数少ない選択肢のうちの一つだと言えます。

FPVカメラ

MK15E-IP-Camera

FPVカメラとは、まるで機体に操縦者が乗っているかのような視野を提供する為のカメラセンサーです。

撮影用に上下左右に稼働するカメラとは区別され、基本的には機体の正面向きで固定されたものをFPVカメラと呼ぶ場合が多いです。

今回はSIYI MK15Eのシステムに合わせて、FPVカメラとしてアナログシステムのFPVカメラではなく、SIYI MK15E IP Cameraを使用します。

MK15Eのパッケージによっては、FPVカメラがセットになっているものもあるのですが、今回使用する「エンタープライズスタンダードコンボ」には含まれていませんので、別途用意が必要です。

SIYI MK15EはIPカメラであれば割と何でも使用できるらしいのですが、自分はこれまでIPカメラというものを使用した事がなく、接続や設定に少し不安がある為、今回は専用のものを使用します。

Holybro Pixhawk4 to SIYI Air Unit Cable

SIYI-AirUnit-Cable

最後に細かいものですが、MK15EのAir Unit(機体に搭載するので受信機と呼んでしまいがちなのですが、厳密に言うとテレメトリーやビデオを送信する為受信機の機能だけではない)とPixhawk4を接続する為のケーブルです。

これはPixhawk4 miniのパッケージにも、MK15Eのパッケージにも含まれていませんので、別途用意する必要があります。

付属のものをピンアサインの変更するなどして使用できそうな気もしますが、せっかく専用のものが出ていますので、今回は利用することにしました。

Pixhawk 6Xでも使用可能かどうか、一通りの記事が完成してから仕切り直して確認したいと思っています。

次回は組み立て

今回は組み立てで使用するパーツを簡単な役割の解説と共に紹介してきました。

記事を準備している間に当店の在庫もメーカーの在庫もなくなってしまい、既に入手しづらくなってしまっているアイテムが多いのが残念ですが、基本がなければ応用の話などとても出来そうにないので、一旦この構成で記事をまとめたいと思います。

ちなみに、この構成は使用するファームウェアがPX4であってもArdupilotであっても、同じものが使用可能です。

Pixhawkでは配線のほとんどがコネクター接続でハンダ箇所が少なく、今回は組み立てやすいようパーツを選んでいる事もあるので、あまり組み立ては難しくありません。

次回は簡単に組み立て作業の様子をご紹介出来たらと思います。

ArdupilotPixhawkPx4

JACK によるブログ

DAYSCAPE ( DIYドローン オンラインショップ ) では、FPVドローン、産業開発ドローンの分野に関する商品の紹介やドローンの組み立て、使用方法などの情報発信を行っています。

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