Ardupilot Rover の製作【2】Ardupilot Rover の組み立て概要

目次

Section 1

Ardupilot Roverの組み立て

前回 Ardupilot Rover の製作【1】でCC02シャーシの TAMIYA LAND CRUISER 40 を一通り楽しんだ後に、本来の目的である Ardupilot Rover の作業を開始しました。

まず配線なのですが、これまで標準的なカーラジコンの構成ではESCが中心的な役割を果たしていたのに対し、Ardupilot Rover では頭脳であるフライトコントローラーが中心的な役割を担います。

車両タイプは飛ばないのでフライトコントローラーと言うのも正しくはないと思いますが、今回はフライトコントローラーとして使用する目的で販売されている MATEKSYS F405-STD を使用していますので、この記事ではフライトコントローラー (FC) として記載していきます。

Ardupilot で使用できるフライトコントローラーの基板やユニットは、Ardupilot ドキュメントの Choosing an Autopilot で紹介されています。

Choosing an Autopilot
https://ardupilot.org/copter/docs/common-autopilots.html#open-hardware

PX4と比較し、Ardupilot は圧倒的に多くのデバイスが標準的にサポートされています。

特に、Pixhawk のようにケースに入った形のFCだけでなく、FPVドローンなどで使用される基板タイプも多くサポートしているのが Ardupilot の特徴。

MATEKSYS や Holybro のFCは Ardupilot に対応しているものが多くあり、比較的低コストで試せるのが嬉しい点です。
ただし、個人的には初めて Ardupilot に挑戦する場合、 基板タイプよりも Pixhawk シリーズのFCを使用するのがお勧めです。
基板タイプは処理能力やメモリ容量の制限などにより、機能が制限されたファームである場合も多く、本来あるべきパラメーターが出てこなかったりします。
また、初めにArdupilotをフラッシュする時点でスムーズに行かないなど、正常に作業が進んでいる時のイメージが出来ていないと取り扱いが難しい部分があると考える為です。

H7などのチップを搭載した MATEKSYS H743-SLIM V3 フライトコントローラーなどを使用すれば、比較的 基板型のFCでも始めやすいとは思うものの、Ardupilot やPX4で組み立てやすいように作られている Pixhawk シリーズと比べると少し難しいのかなと思っています。
もし 基板型のFCでトライする場合は Ardupilot のドキュメントに 基板ごとの詳しい解説が出ていますので、事前によく読んで自分の目指す構成に充分な性能を持っているのか確認してから始めるのが良いと思います。

Section 2

配線の概要

今回使用しているMATEKSYS F405-STDの詳細ページは下記になります。

Mateksys F405-STD and variants
https://ardupilot.org/copter/docs/common-matekf405.html

この基板とその派生品に関しては、細かい配線まで紹介されており、ほとんど近い形で作成しました。

Mateksys F405-STD は既に生産完了となった古い製品ですので、細かい配線については割愛します。

基本的には Betaflight などで使用する場合と似た接続方法になるのですが、 UARTの何番がSERIALの何番に該当するかなど、ご使用になる製品の情報をしっかりご確認ください。

細かい配線は基板ごとに異なるものの、全体的な接続方法はあまり変わらないと思いますので、今回作成した Ardupilot Rover の全体の配線イメージを紹介します。

まず、赤い矢印で記載した給電のところなのですが、MATEKSYS F405-STD を動作させるためには5Vで給電する必要があります。

ESCにBEC機能があるものの、基本的にはサーボへの給電用のもののようで選択できる電圧が6V/7.4V/8.4Vの3種類でしたので、別途5Vへ降圧するBECとしてMATEKSYS Micro BEC 6-30V to 5V/9V-ADJ を追加しました。

Micro BEC 6-30V to 5V/9V-ADJ は連続負荷電流1.5Aなので、システム全体を動作させるのに十分かわからなかったのですが、現在接続している内容については正常に動作しています。

バッテリーから直接BECに入れても動作自体は問題ないものの、ESCについているスイッチで全体を起動できる形にしたかったので、上記図のような形にしました。

バッテリーから黒い矢印でFCと接続している配線は信号線と言うわけではないのですが、MATEKSYS F405-STD のVCCパッドに接続し電圧を読み取る形にしています。

他は必要なデバイスを接続しているだけなのですが、先ほど紹介した Ardupilot のドキュメントで Default UART order として紹介されている通りの場所に接続しておくと後々設定を変更しなくても良いので、非常に楽です。

FPVカメラとVTXは、今回折角なのでボディ内に搭載しFPV操縦できる形にしたため搭載しましたが、目視でのみコントロールする場合は不要です。

FCの起動やアームのタイミングがわかりづらいので、ブザーはつけておいた方が良いと思います。

可能であればインジケーターLEDもつけたいところなのですが、ボディ内に搭載すると反射でFPV映像が見え辛くなるかなと思った事と、ボディ外につけると LAND CRUISER 40 の外観としてどうなのかと言うところで迷った挙句、現在はまだつけていません。

今回GPSを利用した自動走行が目標ですので、GPSを搭載しているのですが、Ardupilot はコンパスが必須ハードウェアとされており、GPSとコンパスが一体型になっているセンサーを使用しています。

Pixhawk などケースに入っているFCの多くはFC本体ケース内にもコンパスが内蔵されている場合が多いので、外付けのコンパスは必ずしも必要ではないと考えられますが、基板型のFCのほとんどはコンパスが内蔵されていないので、GPSとコンパスが一体型になっているセンサーを使用するのが便利です。

ドローンの方で使用しなくなった古いパーツが多く、現在入手する事が難しいものも多いですが、今回使用したパーツリストは下記になります。

  • FC: MATEKSYS F405-STD
  • ESC: HOBBYWING QUICRUN1080 BRUSHED G2
  • サーボ: FUTABA S-C300
  • BEC: MATEKSYS Micro BEC 6-30V to 5V/9V-ADJ
  • GPS & Compass: Nano M8 5883 GPS Module 
  • Buzzer: BETAFPV 5V ブザー for FPV racing Drone
  • VTX: HGLRC Zeus nano VTX 350mW
  • Telemetry: ESP-WROOM-02開発ボード
  • FPV Camera: Foxeer Predator V3
  • Reciver: Frsky XM+

上記が前回 Ardupilot Rover の製作【1】TAMIYA LAND CRUISER 40 でご紹介したラジコンカーとしての配線ですが、かなり基板が増えておりますので、随分変わっている事がわかります。

Section 3

ドキュメントとの相違点

基本的には Ardupilot のドキュメント Mateksys F405-STD and variants に紹介されている通りに配線しているのですが、いくつか違う点もありますのでご紹介します。

まず受信機の接続ですが、今回Frsky XM+という受信機を使用しています。

以前 Mateksys F405-STD を使用していた際に使用していたものがつけっぱなしでしたので、そのまま使っているだけなのですが、ここがドキュメントと異なっています。

ドキュメントでは信号線をオレンジのRX2に接続する形で紹介されていますが、グレーの矢印で示したその下のパッドを使用し、問題なく動作しています。

その他、FCへ5Vを給電するパッドが裏側にもありますので、今回は裏側のパッドを使用しました。

また、Ardupilot のドキュメントの方はマルチコプターの例で記載されていますが、今回Roverタイプになりますので、アクチュエータの接続も異なります。

前回も簡単にご紹介しましたが、Ardupilot Rover でサーボ1つのみでステアリングを切る車両の場合、CH1にステアリング、CH3にスロットルにする必要があります。
そのためS1にサーボ、S3にESCを接続し、S2とS4にはドラッグブレーキ強度とリアルカーモードの切り替えというESCの追加機能を制御する配線を接続しています。

Section 4

テレメトリ

今回テレメトリとして、ESP-WROOM-02 開発ボードというものを使用しています。

この基板は ESP8266EX というマイコンを搭載した開発用のボードとして売られているもので、初めから Ardupilot で使用できるテレメトリの送受信機として売られている訳ではありませんが、下記の Ardupilot のドキュメントでこのマイコンをテレメトリとして利用する為の方法が紹介されています。

ESP8266 wifi telemetry
https://ardupilot.org/copter/docs/common-esp8266-telemetry.html

マイコン単体でも販売されているのですが、入力電圧だったりスイッチだったり、使用するために追加で配線しなければなりません。

開発ボードの状態でも充分小さいので、 Ardupilot のテレメトリーの用途で使用するなら、開発ボードの形で購入すると手間が少ないです。

Section 5

FCマウント

CC02シャーシにフライトコントローラーや様々なデバイスを搭載するために、簡単な3Dプリンターパーツを作成しました。

割と雑に作ったので改善の余地はあるとは思うのですが、下記の共有サイトにアップロードしましたので自分で設計したり何かを加工して取り付けるのが手間な方は必要に応じてご利用ください。

https://www.thingiverse.com/thing:6750550

また、LAND CRUISER 40 でしかテストしていませんので、同じCC02シャーシの他の車種でそのまま利用できるかは未確認です。

LAND CRUISER 40 で使用する場合限定なのですが、なんとこの3Dプリンターパーツを使用するとボディをそのまま取り付ける事ができます。
これなら普通のラジコンを装いながら自動走行も可能ですね。

次回からは必要に応じ細かい部分を補足しながら Ardupilot Rover の設定をご紹介していきたいと思います。

JACK によるブログ

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