目次
Section 1
アクチュエーターの設定
今回はPX4のアクチュエーターの設定を進めていきたいと思います。
アクチュエーターとは簡単に言うと駆動装置の事で、今回の機体では4つ付いているモーターだけが該当します。
モーターやサーボを動かす為の設定をアクチュエーター設定でおこなうと考えるとわかりやすいかもしれません。
前回設定した電源設定のページにESCキャリブレーションの項目があるのですが、ESCキャリブレーションを実施する為の前提条件としてアクチュエーター構成が済んでいる必要があります。
ESCにはキャリブレーションが必要なタイプ (PWM/OneShot ESC) と不要なタイプ (Dshot ESC) があるのですが、今回使用している AIR GEAR の 20A ESC は古くからあるPWMのESC (Throttle Signal Frequency 50Hz〜600Hz) なので、アクチュエーターの設定が済んだ後にESCキャリブレーションを行います。
Section 2
Geometry
QGCの機体設定から Actuators タブを選択すると、アクチュエーター設定が表示されます。
アクチュエーターの設定に関して詳細は下記にまとまっています。
Actuator Configuration and Testing
https://docs.px4.io/main/en/config/actuators.html
Geometry;Multirotor では、モーターの数と位置、さらに対応する場所のモーターが時計回りか反時計回りなのかを下の図を見て確認し、Direction CCW のチェックが正しいか確認します。
PX4 設定【1】で設定したフレームの設定が Geometry;Multirotor の部分に反映されているものと考えられ、今回この部分は特に問題なさそうでしたので変更していません。
プリセットのないフレームの場合、この部分の設定は少し手間がかかるものと考えられます。
Section 3
Actuator Outputs
まず、PWMの周波数を確認します。
デフォルトで400Hzでしたので変更していませんが、使用しているESCが対応しているかどうか、スペックを調べて確認しましょう。
次にFunctionを設定しました。
今回組み立て時に気をつけて、あらかじめ番号通りに配線している為、PWM AUX1〜4を上から順番にMotor1〜4に設定しました。
ここまでの設定でうまく行くと思ったのですが、これだけではなぜかモーターが2つしか回りませんでした。
Section 4
PWM MAIN
先程までの設定でモーターが2つしか回らない状態を解決するために変更した設定は、先程まで見ていたPWM AUXタブの隣にあるPWM MAINタブの設定です。
点線で示した部分にMotor1〜4が設定されており、PWM AUXの設定と競合してしまっていたようですので、これらを全て Disabled に変更する事で、モーターが4つともしっかり回るようになりました。
この設定は以前に設定して飛ばしていた古いファームウェアの情報が反映されてしまっていた可能性もあるため、初めて設定する場合は Disabled の状態になっているかもしれませんが、もしうまくモーターが回らない場合は念のためご確認ください。
MAINとAUXの2つがあるなら、普通に考えるとMAIN側を優先して設定すべきと思うところですが、先程紹介した PX4 User Guide の Actuator Configuration and Testing には、レイテンシが低いため PWM MAIN よりも PWM AUX 出力が優先されると記載されています。
そのため、今回は PWM AUX 出力を優先して設定しました。
Section 5
Actuator Testing
いよいよモーターを回して配線や設定が正しいか、確認していきます。
モーターが4つ回っていたとしても、回転方向が間違っていたり、モーターの番号と位置が間違った状態だと飛行できないだけではなく大変危険です。
モーターのテストを行う前に、プロペラがついていない状態である事だけでなく、モーターが何かに触れていないことをしっかり確認しましょう。
モーターを回すので、機体にバッテリーを接続するのですが、FCが先に起動してしまうとESCとの通信がうまくいかない事がありますので、バッテリーで機体がしっかり起動した事を確認してからUSBでFCとPCを接続します。
あとは上記画像②番で示した Enable sliders のスイッチをアクティブにし、その下のスライダーを上げて行くとモーターが回転します。
ALL Motors のスライダーを利用すると全てのモーターが回ってしまい、位置と番号が正しいか確認できませんので、Motor1〜4までのスライダーを使用してモーターをひとつずつ回し、モーターの位置と回転方向が正しい事を確認します。
もしモーターの位置と番号が正しくない場合は、 PWM AUX の AUX1〜4の設定変更で対応するか、配線を変更して対応するか、2つの修正方法があります。
右上にある Identify & Assign Motors ボタンをクリックすると半自動でモーターを割り当ててくれるとのことなのですが、今回は特に試しませんでした。
配線の変更でモーターの位置と番号が違う問題に対応する場合は、FCとESCを接続している信号線を変更する形になります。
もしモーターの回転方向が違っている場合は、ESCとモーター間の3本の配線のうちどれか2つを入れ替える事で回転方向を修正できます。
DshotESCを使用している場合はQGCからモーター回転方向を反転する方法についてドキュメントに記載がありますが、実際に試した事がないのでうまく行くかはなんとも言えません。
Section 6
ESCキャリブレーション
ここまで設定が済んだら、ESCキャリブレーションを実施します。
冒頭にも記載しましたが、ESCキャリブレーションが不要なESCもありますので、その場合はキャリブレーションする必要はありません。
モーターが2つしか回らないというトラブルがあったため、何度かESCキャリブレーションを実施したのですが、時折キャリブレーション中にモーターが回る事もありましたので、当然プロペラは外した状態で、モーターが何かに触れていないか確認してから実行しましょう。
ESCキャリブレーションについて、詳しくは下記のページで紹介されています。
ESC Calibration
https://docs.px4.io/main/en/advanced_config/esc_calibration.html
ESCキャリブレーションもESCを起動させる必要があるのですが、途中で指示がありESCを起動する事になりますので、まずは機体にバッテリーは接続していない状態でスタートします。
電源の設定ページに移動し、ESC PWM 最小&最大値キャリブレーションボタンをクリックします。
ESC PWM 最小&最大値キャリブレーションボタンをクリックすると早速バッテリーを接続するように指示がありますので、バッテリーを接続します。
バッテリーを接続するとキャリブレーションが開始され、恐らく数秒で終了します。
完了するとバッテリーを外しても良いと表示されますのでOKをクリックしてESCキャリブレーションは完了となります。
ここまで設定が完了したら、プロペラは外した状態で機体に電源を入れ、プロポを使用してアーム操作を行ってみましょう。
PositionモードだとGPS FIXが完了しないとアームできない等、アームできない条件が多いので、あまり条件が厳しくない Manual/Stabilized モードが良いと思います。
自分の場合はここまでの作業でアームし、モーターが全て回る事が確認できました。
まだ設定していない項目もありますので、何か別の設定漏れがあってモーターが回らない可能性もあるのですが、飛行テスト前には当然アーム操作でモーターが回る状態になっていなければなりません。
アクチュエーターの設定が完了したのであれば、アーム操作を試してみて、そろそろ飛べそうなのか、飛行前にまだ解決しなければならない課題があるのかなどを明確に意識しておくと良いかと思います。
今回はPX4のアクチュエーター設定を紹介しました。
ここまで来るとテストフライトも近いのですが、次回は飛行テストの前にセーフティの設定を確認します。